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夢捨て場
日常報告及びネタ暴露専用のブログです
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2011/08/19 (Fri) 19:29
八神帝様

氷嚢

【専用嚢】

4期鬼太郎 鬼猫ss
↓↓↓

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暑い


いや、夏だから暑いのは当たり前なんだけど、なんだろう最近の夏は異常だ。
昔も夏は暑かった。
しかし涼しくなる方法もいくらでもあった。
川で河童達と水浴びもした。
海で人魚達と泳いだ。
そして井戸で冷やしたスイカを食べて、種を飛ばして笑って、行儀が悪いとおばばに叱られたりなんかして…


今はどうだろう。
川は汚れて水浴びも出来ない。河童もすっかり減ってしまった。
海にも人があふれんばかりで、人ならざる自分達はとてもその中に入れない。
せめて人目につかぬ夜にでもと思っても、夜の浜辺にも人がいる。むしろそっちの方がタチが悪い。
昔、人間は夜には出歩かず、山の神域には近づかず、海に祈りを捧げ、人間の住む場所と、ヒト以外の者が住まう場所が明確に分かれていたものだ。
しかし現代、前人未踏などという言葉は既に死語となり、人間が立ち入らぬ場所などどこにも無い。


あぁ、そういえば神社の軒下も夏にもぐれば涼しかった。
しかし今は網が貼ってあったり、ロープが貼ってあったりする。
フシンシャとかが入らないようにするのだそうだ。
フシンシャとはなんなのかはしらないが、そんなことのために妖怪どころかネコの住処も無くなっていく。全く人間というものは世界に人間しかいないとでも思っているのか。人間以外のものがどうなっても構わないのだろうか。


普段自分はこんなことは考えない。
だって幼馴染の考えと反することだから。
それに自分も人間が好きだから。
優しい人間もたくさん知っている。
だから自分は幼馴染のそばに、ヒトのそばにいるのだ。


けれど自分は夏の暑さが苦手なのだ。
どうしてもイライラしてしまう。
冬は厚着すれば良い、火を焚けば良い。けれど夏の暑さはどうにもならない。
涼をとるための方法もことごとく人間にだめにされている。
これがいわゆるフカイシスウが高くなるというものなのか。
どうにも気分が悪い時には人間を悪く言ってしまう。
自分の悪いクセだ。
むしろこっちが妖怪としての本性なのかもしれないが、それでもどんなに不愉快でも人間を傷つけたいとまでは思わない。それは救いと思って良いのだろうか。


あぁ、それにしても本当に暑い。
この暑さでは雪ん子たちもさぞかしつらかろう。
いくら北国の山の中とは言え、心配になる暑さだ。
幼馴染たちを誘って遠出でもしてみようか。むこうはこちらよりは涼しかろう。
うん、よし、そうしよう。
このまま人間へのうらみつらみを考えているよりはよほど建設的だ。


そうと決まれば、急いで幼馴染の家に行こう。
この道を真っ直ぐ。
もうすぐ木の上の家が見えるはず。
そうして言うのだ、みんなで一緒に出掛けようと。
きっと幼馴染もこの暑さでへばっているはず。
そうでなくてもグータラするのが好きなのだ。
木の葉の布団の上、大の字になって寝ているに違いない。
だらしが無いと親父さんに叱られているかもしれない。
そうしたら親父さんをなだめて、北国に誘うのだ。
みんなで一緒に涼みに行こう。
この暑さだからきっとみんな賛成してくれるはず。
この足元がぐらつくような暑さも、目がかすむような暑さも、人間を悪く考えてしまう自分自身ともしばらくはおさらばできる。


―――さぁ、家が見えてきた。

 

 

 

 

「……あれ?」
聞き覚えのある話し声、見覚えのある天井。
「やぁ、気が付いたかい、気分はどう?」
目の前一杯に幼馴染の顔。そうだわたしは幼馴染の家に向かって走っていたはずだし、家が見えていたはずだ。なのになぜか今幼馴染の家の天井を見ている。
え?天井?!
天井が見える=自分は横になっている。どこに?
―――幼馴染の布団を奪って
「うっわぁ!ご、ごめんなさ、い…?」
ぐらぐら天井が回る。
ガシャンとなにか冷たいものが額から落ちた。と思ったらまた布団の上に突っ伏していた。
「あぁ、これこれ急に動く出ない」
親父さんの声。
「熱中症?っていうらしいよ。今おばばが薬を持ってきてくれるってさ。ねこ娘は暑いの苦手だもんね。無理しちゃダメだよ」
子供をあやすようにぽんぽんとなだめられて、額に氷嚢が乗せられる。あぁ、さっき落としたのはコレか。
ネッチューショーというのは解らないが、とりあえず自分が倒れたことは解った。
あぁ、自分はまた幼馴染に迷惑をかけてしまったのだ。
「涼しいだろ。雪女たちが今年の夏は暑いからって氷を送ってくれたんだよ。早速役に立ったね」
「鬼太郎は」
「ん?」
「鬼太郎は暑くないの?わたしに氷を使っちゃって…せっかく送ってもらったんでしょ?」
微笑む幼馴染を仰ぎ見ればずいぶんと涼しそうだ。この暑さで汗ひとつかかないとは驚きだ。この雪女特製の氷のせいだろうか。
「ぼくはねこ娘ほど暑さに弱いわけじゃないからね」
笑って頬を撫でるその手は酷く涼やかで、ひんやりと心地よい
「ね?」
ぼくは幽霊族だから、と。
そういえばこの幼馴染の体温は常日頃から低かった。炎を纏うこともあるがやけどをするわけでもなく、熱に倒れることも無い。なんとも不思議な体の持ち主だった。


「鬼太郎の手は冷たくて気持ちがいいね」
「そりゃよかった」
くすくすと笑う声も心地よい。隣にいてくれることが嬉しい。
頬を撫でてくれている手を握るとどうしたのと問うてくる。
「もうちょっとくっついててもいい?」
「いいよ。いくらでもどうぞ。それにしても呼ぶ声が聞こえたから顔を出したら倒れるんだものビックリしたよ」
「まったくじゃわい。気をつけねばいかんぞねこ娘」
「…ごめんなさい…」
なんだかまた熱が上がってしまうような気がしてきた。
自己管理も出来ないなんてみっともない。
ため息をついて幼馴染に擦り寄る。
あぁ、本当に気持ちがいいな。
髪を梳いてくれる手も、優しくて涼やかで大好き。


しばらくうとうとしていたらしい。
目が覚めるとおばばがいて、ちょっと説教を喰らった。
鬼太郎は手を握ったままでいてくれた。
とにかく昼は出来るだけで歩くなと、注意を受ける。
水を飲め、塩分も取れ。気分が悪くなったら日陰とか涼しい所で休め。
まったっくこんな当たり前のことで注意を受けるなんて、自分は本当にネッチューショーとやらで頭がおかしくなっていたのかな、と思う。
まぁ、もうしばらく休んで体調が回復したら帰ってゆっくり休んじゃぞ、と言いながらもおばばの動きはせわしない。
どうやら私のほかにもネッチューショーで倒れた妖怪がいるらしい。
まったく妖怪が熱中症なんて前代未聞じゃ、なんと忙しいことかと小言を言いながらおばばが帰っていった。


「もうすこし休んでいきなよ、まだ日が高いからね」
また倒れたら大変だ。
ずっとひんやりと心地よかったが、確かに外はまだまだ明るくセミがうるさく鳴いている。私の体が冷えているのは幼馴染のおかげのようだ。
「ぬるくなっちゃったし、氷を変えるよ」
待っててねと立ち上がろうとするその手を離さずいれば、困ったように、氷を取りにいけないよと優しくささやく。
あぁ、なんて涼しくて気持ちの良い。
氷は確かに冷たくて体はずっと冷えるだろうけど、だけどだけどそれよりも…
「あのね、ごめんね」
「なにがだい?」
「鬼太郎の布団を取っちゃって」
「なんだそんなこと、気にしないで」
けらけらと笑う。
大抵そうだ。
優しいから、甘いから、こんなことでは怒らない。
でも
「だって…鬼太郎グータラ寝るのが好きじゃない」
うぇだかなんだか、変な声を出したのが聞こえた。
だってそうじゃない。大体寝てるじゃない、この時間。
確かに寝るのは好きだけど、別にグータラってワケじゃなくてさ、っていうか、病人追い出してまで寝ようとは思ってないから、とかなんか言ってる。
言っちゃマズかった?
でも寝るの好きなんだよね。
でもってわたしは今病人だからもうちょっとわがまま言ってもいいかな?
怒らない?
怒るかな?


「だからさ、鬼太郎一緒に寝ようよ」
「は?」
きょとんとしてる顔が可愛い。
男の子に可愛いなんていったらだめなのかなぁ。
「だって鬼太郎が横に寝てれば氷嚢要らないじゃない」
涼しいし、気持ちいい。
「僕は氷嚢代わりかい?」
拗ねたような口調でもやっぱりこの人は怒っていない。
だって優しく笑ってる。
あぁ、この顔が大好き。
手を伸ばす。手を絡める。
昔からよくこうやって昼寝をしてるので今更といえば今更だけど。
だけどやっぱり嬉しい。
暖かくて涼しい。
一緒に布団の上に横になって、もっかい寝ちゃいなよと抱きしめられる。
嬉しくて笑う。
幼馴染も笑う。
「涼しくて気持ちいい」
「はいはい」
「くっついていい?」
「もうくっついてるよね」
くすくすくすくす2人でくっついて幸せ。
明日は川に水浴びに行こうよ、釣竿も持ってさ。
それでもまだ暑かった僕がこうして冷やしてあげるよ。
抱きしめる、抱きしめられる。
ネッチューショーにはしんどういしもうなりたくはないけれど、こうして昼間から2人でグータラ寝てるのも楽しいかもしれない。
普段は自分が外に誘い出すが、夏は動くのも億劫だし、夏の間はコレもいいかと思う。
あぁ、でもみんなも涼しがりたいだろうし、そうしたら逆に暑苦しくなってしまうだろか、と、そこまで考えただけで言葉に出したわけではないのに幼馴染はみんなには雪女の氷を持っていってあげるから、気にしないで良いんだよと言う。
君が一番暑さに弱いんだから、これは君の専用。
抱きしめられる。
触れた肌が涼しくて、心の中がじんわり暖か。


まぶたを閉じる。
そういえば最近は夜も暑くて眠れなかった。
幼馴染に甘えてありがたく休ませてもらおう。
体力が回復したら2人で人間の町へ行こう。
そして今度はわたしがアイスクリームを奢ってあげる。


いつの間にかイライラはなくなっていることに気付きもせずに、意識を手放し眠りに落ちる。


くっついていると涼しい。
くっついていると幸せ。
自分だけの専用氷嚢。
それは言ったら怒るかもしれないけれど…


--
♪作者様案内♪
>>八神帝様
昨年MH祭デビューを果たして頂き、今年も参戦!
昨年の作風を彷彿とさせる詩的な文が素敵ですっ♪
4期鬼猫のほのぼの~とした優しい雰囲気を目一杯出してくださいました!
これまでの作品
「旻の鏡」
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八神帝様へ
大和 2011/08/19(Fri)22:09:16 編集
こんばんは~。
素敵な4期鬼猫、ありがとうございました。読後感が素敵です。鬼猫要素満載で、ほのぼのしながら優しい気持ちのまま読み終えました。
最後まで優しい松岡に、悶えましたわwww
鬼太郎は、いい保冷剤ですね^^ 
自然氷嚢…!
矢野 2011/08/19(Fri)23:13:22 編集
一家に一台、鬼太郎が欲しくなりましたっ!!!///
ああでも猫ちゃんの専用氷嚢だからダメかっ…!
なるほど確かに鬼太郎って体温めちゃくちゃ低そう! と思いつつこの発想に身悶えさせて頂きましたvv
素敵な作品、有り難うございます八神様!
禿げ萌えたあああああ
五平餅 2011/08/20(Sat)00:04:52 編集
夏にぴったりの…っでも涼しいカップルだなコンニャロォォオオオッッ!!!!///(ごろんごろん)(落ち着け)はじめまして八神様~(^O^)
なにこれ超萌えます…!!
胸がどきどきしてきたんですがどう責任とってくれるんですか(*^p^*)ハアハア
可愛い二人が脳内で寝てるんですけど!どう責(ry

素敵な作品ありがとうございましたっ!!///
八神帝様へ
珠歌 2011/08/20(Sat)05:52:19 編集
鬼太郎の優しさにドキドキさせて頂きました!
優しくひんやりと猫娘を労り、包み込む包容力…vvまさに、専用氷嚢!!
冬はこのお礼に猫娘が専用の湯タンポになったりするのかな、毎日なんて幸せな2人なんだ!と想像してしまいました
素敵な幸せのお裾分け、ありがとうございました!
ホッとする冷たさv
SUNASU 2011/08/21(Sun)16:29:09 編集
体はひんやり、状況はホカホカ。
幸せな空気があふれ出ていて
なんという癒し空間!と思いつつ
拝読いたしました。

猫娘の中の小さなイガイガが
鬼太郎とのふれあいで解けていく様が
優しくてとても素敵ですv
ありがとうございました。
八神 帝 URL 2011/08/27(Sat)22:16:41 編集
>大和様
松岡はどこまでもねこに甘いと思います。
甘くて優しくて冷たいアイスクリームのような雰囲気を目指してみました。
>矢野様
遅くなって申し訳ありませんでした。
なんとなく体温低いというイメージがあったんですが公式ではないですね、そういえば;;
ねこ以外の相手なら逆に体温上げるとかやらかしそうなうちの松岡です。なんか体温調整できそうな気がするんです…
>五平餅様
そこまで萌えていただけるとは本望です!ありがとうございます!
>珠歌様
ウチの2人は季節関係なくくっついています。
松岡はなんとなく体温調整できそうな気がするので、冬はちょっと体温上げるんじゃないのかなーとか思ってます。
>SUNASU様
ねこのイライラは暑さのせいなので、涼しくなると同時に消えてしまいました(笑)
ねこは鬼太とくっついてれば幸せだし、鬼太はねことくっついていることで安心する、そんな二人を目指してみました。

感想ありがとうございました。
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