2008/06/28 (Sat) 01:04
わんこ::
「お前って本当、犬みたい」
「―――…」
突拍子も無く言われた言葉に思わず口を開いた状態で固まる。右手は口に運び掛けていたケーキの欠片を、フォークで掬った状態のまま止まっている。既に空になった皿に、不作法にもフォークを投げる様にして置きながら彼は再び言う。
「お前って本当、犬みてぇ」
「―――…」
ラウンダバウトは考えた。
犬…という言葉から連想されるのは忠誠と実直。猫ほど悪いイメージは無い。しかしながら彼の言い方はどうも険がある。どことなく皮肉の混じったその物言いに、一つの想像がラウンダバウトの頭に浮かぶ。
犬…主人に対して舌を出し、愚直なまでにぱたぱたと尻尾を振っている…
ラウンダバウトはその想像にかっとなって言い返した。
「人の事言えた義理じゃないだろう」
「いーや、お前は犬だ。ちょっと恩のある奴に誰これ構わず尻尾降って…ほんっとうに犬みてぇ」
「なっ…」
思わずぎっと、珍しく非友好的な物言いをするビートを睨み付ける。
「そんな事無い。むしろ僕より君の方がよっぽど犬だ。その生命力はゴキブリにも匹敵するけどね」
「ごっ…お前、言って良い例と悪い例があるだろうが」
「先に行ってきたのは君だ。僕は犬じゃない」
「いんやお前は絶対犬!」
「君の方が犬だ!」
「お前だ!」
「君だっ!」
「お前だっ!」
「君だっっ!」
「―――…何やってんの」
二人の様子を見ていた凪が、呆れた声を出す。二人はばっとそんな彼女を見て、こぞって尋ねるのだ。
「「どっちが犬!?」」
…そりゃどっちも。
凪はその言葉をごくりと喉を鳴らして飲み干すのだった。
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