「チョコふぉんでゅってのをやりに来た」
「うん、帰れ」
「お嬢! 鍋の準備はオッケーか!?」
「小さいので良いんでしょ? あるよ……あ、つるべ火よろしくね」
「既に、打ち合わせは済んでいた感じですか」
「大量のチョコに+αで色々買ってこなくちゃならなかったら大変だったぜ」
「あ、地獄童子ったらマシュマロ買い忘れてるじゃん。チョコフォンデュって言ったらマシュマロでしょ」
「……亭主を、そっちのけでっ……!」
「何言ってんだよ嬢ちゃん。チョコふぉんでゅって言ったらやっぱバナナだろ! バナナ! 戦時の高級嗜好品! 果物の王様!」
「あのふんわり柔らかしゅわしゅわ食感の上にぱりぱりチョコってのが美味しいの。もうチョコ溶かしてるから買ってきてよ。はい、鬼太郎のへそくり」
「あたかも……お前らが! 夫婦の様に……!!! つかそれ僕の財布! マイワイフそれ僕のお小遣いです!」
「よっし鬼太郎買ってこい」
「父親が子どもに酒買ってこい的なノリだなおい!?」
「さっきから一人で何騒いでんの鬼太郎。どっちでも良いから買ってきてよ」
「最近DVが社会問題として取り上げられてるんですが夫のDVより妻の精神的DVの方が問題なんじゃないのウチの場合!?」
「お嬢……お前鬼太郎からDV受けてるのか……!?」
「何でそうなる!?」
「そうなの地獄童子……ホントこいつ昔からあたしに対する扱いが酷いって言うか調子乗ってるっていうか……」
「むしろ最近調子乗ってるのお前の方だよ!?」
「良いかお嬢、DVってのは一人で抱え込んじゃダメな問題だ。何かあったら地獄に来い。幽子も俺もお嬢の味方だぜ!」
「だから二人で話進めないでくれる!? 俺の主張はまるっきりシカッティングですか!?」
「有難う地獄童子……でも、あんたと幽子さんの間にいるなんて何かいたたまれなくて嫌……」
「え~、幽子はいっつもお嬢来るの待ってるぜ。女友達地獄にいないから」
「いたとしても脱衣婆くらいですもんね……」
「そろそろ僕この寒気がするほど哀しい関係にうちひしがれそうです父さん……!」
「ちょっと、それ僕のセリフなんだけど」
「……松岡!?」
「戸田くんに使われるなんて心外だなぁ……良いかい『あの夫婦……寒気がする程哀しい関係ですね』って父さんに言うのが僕で、それに惨めなツッコミ入れるのが戸田くんなの」
「いや、むしろ俺が突っ込みたいの何でお前がここにいるのかって話し……」
「三田猫ちゃんこんにちはー! マシュマロ買ってきたよー!」
「西村ちゃんグッドタイミングー! もうこの役立たず男共が買ってこないからどうしようかと思ってたのー!」
「はい、男の子をいじめて遊ぶのは、止めましょう」
「そう言われないように頑張らなくちゃならないのが男でしょ……チョコもこれで足りるかな?」
「お邪魔しまーす。戸田くんところでチョコフォンデュやるって聞いて来たんだけど……」
「楽しみねぇ、鬼太郎さんも引っ張って来ちゃったわ!」
「高山くん、今野ちゃん、小串さん、野沢くんいらっしゃーい! やるよやるよ。ちょうど今から」
「まさか……みんな呼んでたワケ!? この亭主に断りもなく!?」
「みんなでやった方が楽しいじゃん。あ、今野ちゃんこんなに果物持ってきてくれたんだ!」
「やるなら徹底的にやらないとね! チョコもガーナから明治まで全種よ!」
「これで一週間くらいもつかな……」
「高山くん……冬眠寸前の熊みたいな顔になってるよ……」
「チョコは高カロリーだからね。この季節には必需品だよね」
「野沢くん……言ってるそばからチョコ食べるの止めようよ。今から溶かすんだよそれ」
「やー、何かいつの間にか大所帯だなこりゃ」
「ねぇ地獄童子、幽子さん呼ぶ事は出来ないの?」
「そりゃ……俺にどうこう出来る事じゃないんだけどよ……」
「―――そりゃァ、貴方ならそうでしょうけどネェ……」
「うおあ! なんだ墓場キタロ……」
「僕の手にかかれば、地獄のルールなんてこんなもんですよォ」
「地獄童子さんっ……!」
「ゆっ……幽子!?」
「す、すごい墓場くん! どうやって連れてきたの!?」
「まぁそれは……企業秘密という奴でして……ヒヒヒヒ……」
「とにかく全員揃った様で良かった良かった!」
「さあ勢いよく溶かすぞー! つるべ火がんばれー!」
「あ、ちょっと待って!」
…………爪楊枝が、無い。
………………あ。
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