発見::
「おっしゃようやっと見つけた黒帽子いいいっ!」
「やあ……なんだっけ、ピアニッシモ君?」
「逆だボケ! フォルテッシモだフォルテッシモ! 最強の方だ!」
「フォルテッシシモとかもっと上はいっぱいあるようだけどね」
「な、何だとっ……そんな馬鹿な……そんないっぱい最強がいたらオレのアイデンティティが……!」
「自分探しの旅も良いもんだ。……ってな事でじゃ、最強くん。頑張れ」
「待てぃっ! あっぶねー流されて今日もそのままバイバイのノリだったぜ!」
「そのままバイバイで僕は一向に構わないんだけどね」
「照れるな! 本当はオレに会えて嬉しいくせによっ」
「君に笑顔でそんな事言われる日が来るとは思わなかったよ」
「それで、今日は世間一般何の日と呼ばれているかお前知ってるか!?」
「ああ、バレンタインだろ」
「うわ! お前の事だからボケて来るかと思ったら一発で来やがった!」
「何で君が動揺してるんだ。それで? 世間一般のお祭りと世間一般とはほど遠いサイボーグの君とどんな関係があるって言うんだ」
「サイボーグじゃねえよ。0×9かよ。いや、待て解ってるなら話は早い……さあ! 何も照れる事は無い! オレにチョコを渡したいんだろう!?」
「どうしてそういう発想に繋がるかな~この男」
「最強、だからな」
「偉そうにかっこつけられてもね……」
「で、俺はこう見えて結構甘党だから何でも行けるぞ。ガーナも森永もダースもなんでも来い!」
「甘党の最強……って言うか結構庶民派……安上がりで良いね、君」
「庶民の味を馬鹿にするなよ……! 因みにお前のお財布の中身もちゃんと考慮した俺の譲歩に感謝しやがれ!」
「つかスーパーで売られてるチョコくらいしか知らないんだろう。世の中美味しいチョコは幾らでもあるよ。ああ、僕はアルコール系はあんまり好きじゃない。覚えておいてくれ」
「何で俺がお前の好み覚えなくちゃならねーんだよ」
「ホワイトデーのお返しに」
「―――と、言う事は!? お前まさか本当にチョコを用意していたのか俺の為に!?」
「勿論だよ最強くん。ほら、君が来ると思ってそこのベンチの下に隠しておいたんだ。是非ご賞味あれ」
「何だとぉ!? お前にしてはなんて気の利くサプライズ……! どのベンチだこれかああああ!?」
ずどん、と真っ二つに割れたベンチの下。そこは当然……何も、無い。
「おいちょっとお前……何も無いじゃ……」
―――因みに、振り返った先にも、もう……誰も、いない。
「あんの黒帽子いいいいいいいいいっっ!!!」
彼の咆吼は夕暮れの街並みに響き辺り―――それに合わせるようにして彼のペンダントが凄まじい嘲笑の声をあげるのだった。
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「も、マジ、メンドイ、あいつ」byブギー