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夢捨て場
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2008/09/08 (Mon) 18:25

先日言っていたザン→

く、苦情は、一切…う、受け付けない、ZE!(死☆
軽いノリで見てやってください。

一応68話「地獄超決戦!~以下略~」の黒VSザンビアの捏造。

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不可解::
 
「何で私がっ…」
 
 むら、と沸き起こる苛立ちにザンビアは手を振りかざす。怒りは力に。その力は、目の前の的に。
 
「あんな弱い女と比べられなくちゃならないのよ!」
 
 駒たる兵士達を一気に向かわせる。どことなく滑稽な出で立ちの南瓜の兵士達は、その顔に笑みを貼り付けたまま冷徹な刃を振りかざす。それは何処までも残酷で、何処までも冷酷で。多勢に無勢とはこの事だ。あの漆黒の翼もすぐに地面を這うことになるだろう。
 悲鳴を上げて地面に伏す黒鴉の姿を想像して、ザンビアは興奮にも似た快感に、にやりと嗜虐的な笑みを浮かべた。
 さあ喘げ。さあ自分の前に平伏せ。この自分を莫迦にした事を後悔しろ。懺悔しろ。
 相手が錫杖を振りかざす。
 その漆黒の翼を広げ、彼は果敢に群がる兵士達に突っ込む。
 
「死ね」
 
 ザンビアは腹の底から呪いの言葉を口にした。
 無情な兵士達は一斉に黒鴉に襲いかかる。その冷たい刃が彼の翼を切り刻む。彼の目を抉る。彼の腕を落とす。彼の足を折る。
 …はずだった。ザンビアの計画では。
 しかし。
 
「―――っ!?」
 
 なんとあの体格で、あの密集する兵士達の合間を、彼はものすごいスピードでくぐり抜ける。
 相手の目標は兵士じゃない。相手は兵士達を見ていない。ならば。
 一瞬にして距離を詰めた相手に、ザンビアはぎょっとして腰掛けていた箒を手に取った。それを咄嗟に構えれば、腕に突如のし掛かる猛烈な圧力。
 一気に手が痺れ、ザンビアは苦痛に顔を歪ませた。
 そして次の瞬間、くるりと奴が手の中で錫杖を回転させる。そして一瞬手の力が緩んだザンビアから、武器を手放させた。
 宙を舞う箒。自分の飛行手段である箒。自分の足である箒。自分の力である箒。それが…
 
――嘘。
 
 がくん、とザンビアの体が揺れる。
 落ちる。
 奴との戦いの為結構な高さに浮遊していた。これで落ちれば結構な衝撃が来る。上手く血の池地獄に堕ちれば問題ないかも知れない。しかし武器のない自分が敵に抗う術はあるか? 血の池地獄にいる地獄の何かに殺されるのでは無かろうか?
 
「ザンビア!」
 
 誰かの声がした。おそらく、共にベアードに使える吸血一族の末裔だろうが…
 ヤバイ、と血の気が引く想いがした。
 死にたくない、こんな所で、と恐怖が一気に押し寄せる。ベアード様、と思わず絶叫する。自分にとって絶対の存在に助けを請う。
 急激に落下が加速する。
 浮遊感に鳥肌が立つ。
 その時。
 
「っ!」
 
 重力に逆らって、突如ザンビアの体が落下を中止した。
 途端腹部に感じる圧迫感、且つ――暖かさ。
 
「―――な」
 
 ザンビアは顔を上げてそれを見た。
 まるで荷物でも抱えるかのように、彼女の腰に手を回してその体を抱く――黒鴉。
 彼は静かにザンビアを見下ろし、そして降下した。ザンビアはその瞬間悟った。救われたのだと。
 
「巫山戯るな!」
 
 身を捩る。相手の腕は離れない。
 
「何、助けたつもり!? なめんじゃないわよ、ぶっ殺すわよ!」
 
 静かな金色の瞳が、ザンビアを見つめて嘆息した。
 
「大人しくしていろ」
 
 まるで子供を相手にするかの様な、その小馬鹿にした顔。こんな小娘に構っていられない、とばかりに黒鴉はザンビアを抱えたまま辺りを見渡す。
 かっとなってザンビアは更に怒鳴った。
 
「ふっざけんな!離せっ!はーなーせえっ!」
 
 彼はザンビアを見ていない。唯不意に、忙しなく辺りを見つめていた彼の瞳が、安堵の色を滲ませるのを見てザンビアは思わず口を噤んだ。
 彼の視線の先を見れば、血の池地獄から宋帝王を救い出した、あの猫族の娘と薄汚いネズミの姿がある。彼の視線の先はその娘に注がれていた。
 
「無事だったか…」
 
 ぽつり、と彼が零す。その瞳は驚く程優しくて。じりじりと熱く、切なく。
ザンビアは益々苛立ちが募り、更に身を捩った。彼の注意は全く自分に注がれていない。もう既に彼の眼中に自分はない。彼にとってもう自分は敵でも何でも無いのだ。唯腕の中で藻掻く虚しい存在なのだ。それが益々彼女の苛立ちを募らせる。
 
――舐めるな。
 
 自分は魔女だ。自分は西洋妖怪だ。こんな田舎臭い日本妖怪とは格が違うのだ。それなのに。
 
 激しく燃えさかる炎が、自分自身の心を痛めてザンビアは唇を噛んだ。
 訳の解らない痛みに動揺した。混乱した。愚弄された事への憤りだ。ザンビアはそう自分に言い聞かせた。そして。
 
「ザンビア!」
 
 不意に頭上で響く、聞き慣れた声。
 はっと顔を上げると、そこには無数の蝙蝠を放ったドラキュラ三世の姿があった。
 黒鴉があの猫妖怪に気を取られていた隙に、一斉に襲いかかる吸血鬼の腹心達。黒鴉が小さく舌打ちをしながら、翼を広げて羽ばたいた。まだザンビアの腰に回した腕を離さない。むしろ更に強くなる腕の力に、ザンビアが思わず「痛い!」と叫んだ。
 その瞬間、黒鴉の腕の力が弱まる。
 無論ザンビアは、怪訝に思った。なんだこいつは、と彼を見た。訝しむザンビアに、ぽつりと黒鴉は呟く。
 
「そうか、お前が狙われるはず無かったな」
 
 何の話だ。
 しかしチャンスだ。
 ザンビアは思いっきり緩んだ黒鴉の腕に噛み付き、その束縛を解いた。彼は顔を歪めてザンビアを見る。再び空に投げ出されたザンビアに、得物を投げ寄こしたのは蝙蝠達だった。
 
「何をしている!ザンビア!」
「煩いわね、ちょっと油断しただけよ!」
 
 ドラキュラ三世の叱責に、ザンビアは思わずかっとなって怒鳴り返す。そして再び臨戦体勢になった。
 …のだが。
 
「引け!」
 
 突然の命令。
 は、と回りの状況を確認すれば、閻魔大王が復活していた。
 しかもベアードが“友”とまで称したあの初代吸血鬼が、やられている。完膚無きまでに、敗北している。
 
「くっ…」
 
 またしてもあの芋妖怪共に辛酸を舐めさせられた。
 屈辱と怒りで沸騰する心を押さえ込み、西洋妖怪達は一気に退散する。
 
 ザンビアは黒鴉を見た。
 あの鳥野郎、と思わず口の中で呟く。
 
「次会った時は…絶対殺してやる!」
 
 黒鴉は既にザンビアを見ていない。
 その視線が注がれる相手を憎々しげに睨み付け、ザンビアは踵を返すのだった。

--

ツンデレ姫君の葛藤。
ここから彼女の打倒黒鴉!と名付けたストーカー行為が始まるのでした(嘘)
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素敵です♪
明都 2008/09/08(Mon)20:17:22 編集
さり気無くドラザンがあるのが素敵です♪
ザンビア……黒鴉が苦手になったかな?
有難うございますっ
shino 2008/09/09 11:24
さり気なくドラキュラに頑張って貰いました(*^_^*)
ザンビアの性格がああだとどうしても甘甘に出来ない自分にがっかり;;
きっともっと明都様なら甘く書けるのだろうなぁっっ////
もう少し精進します☆
またむしろこれからは黒鴉がザンビア苦手になって貰いたいものです(妄想自重!)
考えることはいっしょ☆
森咲まゆみ 2008/09/08(Mon)22:05:11 編集
矢野さんも同じこと考えてる!ってちょっと嬉しかったです。黒ザンだとヤだけど、ザン→黒は楽しいです。
弱みがある猫娘に対しては、かっこいいんだけどどこか可愛い風情だった黒さんですが、ザンビアと並ぶと大人度・男前度がUPするとはこれいかに(笑)いやー想わぬ萌えでした☆
「おとなしくしていろ」に悶えました。
さっっすが!!☆
shino 2008/09/09 11:28
まゆみ様も同じ事を考えていらしたとはっっっ!!!/////(以心伝心vv)
やっぱ黒猫好きとしてはザンビアという新たなスパイスが加わるととてつもなく美味しいですよね☆
そうなんです。ザンビアに限らず猫娘以外には非常にクールで寛大で格好いいであろう黒鴉を妄想するのが大好きです。ちなみに実は体術は鬼太郎より優れていると自分勝手に考えています。妄想あなおそろしや。
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