2010/07/11 (Sun) 21:29
心音::
消えた。
違う、自分の感知領域から外れたのだ。それだけだ。
「―――…」
ふと振り返る。
何処まで感知していた?
何メートル前? 何メートル先?
自分は今どこにいる?
彼女は今、何処にいる?
「―――…」
歩く。
歩く。
走る。
自分の限界まで神経を研ぎ澄ます。僅かな音すら聞き漏らすまいとする。
何処にいる?
何処にいる?
何処に行った?
「―――…」
あ、と思った時。その時ようやっと、僅かな心音が伝わってきた。
とくん、とくんと…
とても静かで…穏やかで、でもどことなく不安定で…
生きているんだな、と感じた途端、気恥ずかしさに赤くなる。
嗚呼、どうやら自分は、彼女の心音が思った以上に好きらしい。
「―――…」
もっと近くで感じてみようか。
ビートは己の髪をくしゃりと掻き上げ、ぼろぼろのスニーカーで地面を蹴った。
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この能力ってホント良いと思う。
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