2008/12/01 (Mon) 23:16
指切り::
疲労の色濃く、端正な面持ちの少女は静かな寝息を立てて眠っている。その頭に膝を貸しているのは、黒髪の少女。既に鬼太郎にとっては、見知った顔。必ずと言っていい程、自分の横にいてくれた少女。
少し土や埃で汚れた髪。細い指で眠る少女の背を優しくさすりながら、猫娘は小さな鼻歌を歌っていた。
その顔に疲労の色は見えない。
しかし、と鬼太郎はこの数日間を思い出す。
彼女はこうして、三日程夢子に膝を貸したまま、一睡もしていないのでは無かろうか。
夜か昼かも解らない、そもそんな物は存在しないのかも知れない、地獄の真っ直中。度重なる戦闘に、皆使い果たした体力を取り戻そうと蹲って、一言も発しない。
その些か寂しさすら感じる沈黙の中、猫娘の優しい鼻歌だけが…静かに響く。
「休まないのかい」
鬼太郎はその横に腰掛けて尋ねた。
鼻歌が止んだ。猫娘は鬼太郎を見て、その目を細めた。
「うん」
「無理するなよ。ここんとこ寝てないだろう」
猫娘は泥の様に眠る夢子の背中をさすりながら笑う。
「あたしは大丈夫だよ。この元気だけが取り柄だからね」
鬼太郎はその言葉に口を開いた。しかし言葉が紡がれる前に、猫娘がそれを制した。
その凛と響く声によって。
「心配性だなぁ、鬼太郎は」
す、と細い指先が鬼太郎の鼻先に来る。「良い?」と彼女はきゅっと目をつり上げて言った。
「鬼太郎はね、夢子ちゃんを守るんだよ」
「―――…」
鬼太郎は数回瞬きした。対して猫娘は、瞬きせず続ける。
「鬼太郎が言ったんだからね。何が何でも夢子ちゃんを人間界に戻すって。妖怪の名誉に掛けて、必ず夢子ちゃんを守るって。だからあたしは夢子ちゃんを助ける。鬼太郎の決意を守るために」
ぎくり、とその言葉に肩を震わす。
鬼太郎は自分でも驚く程、情けない声が飛び出した。
「僕は、君だって…」
「守りたいなんて言ったら怒るよ。鬼太郎は夢子ちゃんを守るの」
そんなバカなと思う。何かあったら夢子の身だけ案じろと言うのか。
確かに自分は夢子を守り抜く所存だ。しかしそこに仲間の犠牲は考慮されていないのだ。夢子を守る。その上で、仲間も守る。誰かを見殺しになんて出来ない。
鬼太郎の考えを読んだかの様に、猫娘が頬を膨らます。些か呆れた口調で彼女は言った。
「あのさぁ、鬼太郎は少し仲間を信じるって言う考え方を持った方が良いと思うよ」
そして小指を突き出した。
それが一つの誓約であることを鬼太郎は知っている。この差し出された指に答えた時、自分は否応なしに彼女の言葉を実行する事になる。
彼女は今、自分を試している。
彼女は今、自分を試している。
「鬼太郎は夢子ちゃんを守る。あたしは…鬼太郎の想いを守る」
彼女の言葉に迷いはない。そこにある決意が、そこにある本気が、全てが鬼太郎の胸に突き刺さる。
鬼太郎は焦った。
咄嗟に良い言葉が思いつかなかった。己の想いに愕然とした。
そうか、ここまでかと驚いた。
そうか、ここまでかと驚いた。
自分の限界が、ここにあるのだ。
眉間を抑える。
懸命に頭を捻る。良い案は無いか。何か良い案はないか。
この誓約、これだけでとどめておくわけにはいかないのだ。だから…
「僕は、夢子ちゃんを守る…夢子ちゃんを人間界に返してあげる」
ぽつ、と鬼太郎が呟いた言葉に、猫娘は小さく頷いた。その微笑みが些か哀しげだった事に、鬼太郎は気付かない。
「僕の想いを、君が守る。僕の心を、君が守る…」
鬼太郎は顔を上げた。その白い頬に手を添え、誓う。
「ならこの旅路が終わったら、僕は君の心に帰ろう」
「―――…」
猫娘がふと首を傾げた。鬼太郎の言っている意味が解っていない様だった。
今はそれで良い。ここで赤面でもされたら気恥ずかしさに死んでしまいそうだ。
鬼太郎はさっと猫娘の小指に、自分の小指を絡めた。
「ゆーびきりげんまん…」
指を切り。
拳万回。
針千本。
地獄に堕ちる以上の苦痛。
そんな事はどうでも良い。それ以上の苦しみ…彼女を悲しませる事、それだけは起こさぬ様、全力を尽くして人間界に戻ろうではないか。
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…なんて、ポジティブな、猫ちゃん…(?)
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…なんて、ポジティブな、猫ちゃん…(?)
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Comment
悶絶…
ひゃあああ!! 3期ですね!!! 猫ちゃんの健気さが愛しい!!! ほんでもって、鬼太郎の綺麗な告白vv綺麗すぎて分からない告白vvv
大好き!! これ!!!!
指きりって、意味深ですね~。
いえ、自分大好きです、この指きりvv
大好き!! これ!!!!
指きりって、意味深ですね~。
いえ、自分大好きです、この指きりvv
ひゃっひいっっ;;
すすすすみません!!!! ちゃんとお返事した筈なのに~~~~っっ;;
返信になっていませんでしたっっ!!!!!;;; 大和様ホントに失礼致しました~~~~~~ッッッッ!!!!!
内容としては指切りって実はめちゃんこ怖かった!っていうネタをテレビで見まして(何でも昔遊郭の女性はホントに小指を切っていたとかっっ…!)それで指切りネタ使いて~~~っっ///って思って書いたんです!…というお返事をさせて頂いてたんですがっっっ…;;;
ちゃんと確認していなくてホント申し訳ないです~~~~~っっっ!;;;
大和様じゃなくてホントこちらのミスですっっ! 不快な思いをさせてしまい、本当に失礼致しましたっっ!!!!!
返信になっていませんでしたっっ!!!!!;;; 大和様ホントに失礼致しました~~~~~~ッッッッ!!!!!
内容としては指切りって実はめちゃんこ怖かった!っていうネタをテレビで見まして(何でも昔遊郭の女性はホントに小指を切っていたとかっっ…!)それで指切りネタ使いて~~~っっ///って思って書いたんです!…というお返事をさせて頂いてたんですがっっっ…;;;
ちゃんと確認していなくてホント申し訳ないです~~~~~っっっ!;;;
大和様じゃなくてホントこちらのミスですっっ! 不快な思いをさせてしまい、本当に失礼致しましたっっ!!!!!