2009/01/08 (Thu) 00:09
嗜好::
「コーヒーはマンデリンに限るね。グァテマラもなかなかだが些か酸味が強くて…あぁ、エチオピアも好きだよ。でも甘党の僕にはやっぱりまろやかな風味のマンデリンかな」
「―――あ、そう」
「相変わらずつまらない反応だな、ピート・ビート。折角豆を挽いて煎れてやったのに、美味いの一言も無しか」
「いや、あのさ、お前俺が味音痴だって大分前から知ってるよな?」
「その味音痴を治して君に豊かな人生を送らせてやろうとしているのに君からは全く熱意が感じられない」
「別に治らなくても…てか俺の人生貧相って意味かそれ」
「味覚のすばらしさを理解していないなんて…人生の三分の一は損しているね」
「初めから知らないから損している気分はねーよ」
「成長という物はね、他から吸収して増加する事ではないんだよ。大量の情報から必要な物を取捨選択する事を言う。君は今膨大な情報を何もかもそのまま、意味もなく飲み込んでいる状態なんだ。そこから“美味い”と言う情報を選択し、更に“マズイ”という情報が何かを得て…」
「長い。結局の所俺の人生に彩りを与えてお前は何になるってんだ」
「―――…」
「―――?」
「…その、君にお菓子でも…作ろうかと、思って」
「――――…」
「何だその顔は!」
「いや、これほどその言葉が似合わない女も珍しいと思って」
「悪かったな! 一応自給自足の生活だって短くないからある程度の料理なら自分で作れるんだぞ! 日々健康食で賄っている君と違って!」
「健康食は現代の宝だぞ。バカにするな」
「バカにしてるのは君だろう! 全く…良いさ。レインだって美味しいって言ってくれたから、君も喜んでくれるかと思ったんだ。少しでも君の食生活を気にした僕がバカだった。さっきの言葉は忘れてくれ。君は永遠に健康食を食しててくれ! もう健康食色に染まれば良い!」
「訳わかんねーよ怒るなよ」
「折角作ってきたのに…コーヒーに合うクッキー…」
「―――…」
「何だその目は。もう良い食べるな。君に触られるのも癪な気がしてきた。それら全てはレインに献上する」
「…っていうか、これ…手作り?」
「無論だ。僕はコーヒーを煎れる時は必ずと言っていい程自作の菓子を添える」
「―――…」
「だから何だその目…あ、こら。やらないと言ったぞ、もうこれはレインの物だ。おい。待て、ああ!」
「―――…」(さく)
「―――…」
「―――…」(もしゃもしゃもしゃ)
「―――…」
「―――…」(ごくごく)
「―――…」
「―――…」(ごっくん)
「―――…」
「――――――美味い」
「…君、味音痴だろう」
「いや、俺の〈NSU〉が確かに告げた。これは美味い」
「関係ないだろう〈NSU〉」
「でもやっぱり、美味い」
「―――…」
「お前の作った物は、美味い」
「―――――…」
「―――――…」
「君、突拍子もなく恥ずかしい奴だよね」
「うるさい人の好意は黙って受け取れ!」
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この二人はネタが尽きない。
この二人はネタが尽きない。
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