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夢捨て場
日常報告及びネタ暴露専用のブログです
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2025/01/19 (Sun) 04:44
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2008/06/06 (Fri) 09:32

“蒼猫”が一発で変換できるようになってしまいましたマイPC。
つかそろそろ終われよこの捏造話。
自分へのツッコミが絶えない、前回の続き

↓↓↓

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 こんなに怖い所だと思わなかった。
 
 既に耳鳴りすら感じる程の静けさ。
 自分の体を脈打つ心臓の音さえも、はっきりと聞こえる。
 霧に紛れる、自分の白い息を見つめて、猫娘は小さく鼻を鳴らした。
 涙腺が緩む。
 どうしてここまで自分は孤独なのだろう。
 
 やはり砂かけに何も言わず来たのが悪かったのか。
 それがこの山の神様を怒らせてしまったのか。
 でもだって、と自分の中で山に言い訳してみる。
 しかし帰ってくるのは威圧的な沈黙。
 小さな体の中で、ひっそりと縮こまる内臓が、更に圧迫されて潰れてしまいそうだ。
 再び涙腺が緩み、猫娘は小さく声を上げた。
 何にも追われていないはずなのに、その行為は非常に危険な物と思われた。
 何かから身を隠す様にして膝を抱える。漏れる息すら何かに感づかれぬ様に、さっと口を閉じて辺りを見渡す。何もない。何もない故に、何かの存在を感じて、それが恐怖を掻き立てた。
 
 鬼太郎、と最近仲良くなった、幽霊族の少年を思い出す。
 彼が自分を助けに来てはくれまいか。あの凛とした顔立ちの少年が、自分の身を案じて探しに来てはくれまいか。
 首を振る。砂かけでも良い。誰でも良い。とにかくこれ以上一人はいやだ。
 いっその事何か別の生き物でも現れてくれれば良い物を。そうすれば、こんなじわじわと襲い来る恐怖に、すすり泣く必要もない物を。
 猫娘は口を押さえながら小さな涙をぽろりと流した。
 
――こわいよう。
 
 口の中で囁く。
 声には出さない。それが何かを呼び寄せそうで怖いから。
 
 あれ、自分は何かに来て欲しいのでは無かったの?
 違う違う、それはもっと別の温かい物で。
 何でも良い訳じゃないのだ。
 何かに来て欲しい。でもそれも何か解らないと怖いのだ。
 
 混乱に視線が揺らぐ。耳を押さえて、抱えた膝小僧で口を押さえて、必死に必死に猫娘は縮こまる。
 そうして血の流れる音すら感じる静寂に、身を任せたその瞬間―――
 
―――…がざ。
 
 地面から離れてしまうのではないかと思う程、飛び上がる体。
 微かに聞こえた、自分の呼吸以外の音。自分の衣擦れ以外の音。確かな――足音。
 
 木の根本に体を押し込め、猫娘は息を殺す。
 否、呼吸を忘れる。
 本来自動的に成される物が、突然作用しなくなってその方法を忘れてしまう。
 
――がさ、がさ。
 
 それが近付く。
 徐々に徐々に、自分との距離を埋めていく。
 
――がさ、がさ、がさがさがさがさ…
 
 速くなる。近付く。近付いてくる。
 
――がさがさがさがさっ
 
 真後ろ。
 
 こみ上げる悲鳴を必死に抑えたその瞬間。

 
「よ~やっと見つけたぁ!」

 
 驚く程憚りの無い声音で、その人は後ろから猫娘をのぞき込むのだった。


*** 
 
 
 炎の様な、強い赤茶の髪の毛が揺れる。
 たくさんの雫を流すその瞳は、金。やはり猫とあって、大きな瞳は光る様な視線を蒼に向けていた。
 
 呆然とこちらを見つめる彼女に、蒼は「よ~やっと見つけたぁ!」と顔を綻ばせる。
 
「お前さんが猫ちゃんだね?」
 
 彼女は返答しなかった。
 違う、息を止めているのだ。まるで氷付けにされたかの様に、彼女はじっと蒼を見つめて動かない。
 だんだん顔色が悪くなる彼女に、蒼は手を伸ばして「ね~こちゃん」と軽く呼んだ。
 その小さな肩に自分の手が触れると同時に、ひゅっと漸く猫娘が呼吸を始めた。
 直後、一気に百メートル駆け抜けたランナーのように、荒い呼吸をする。そんな彼女の背を、蒼は優しくさすった。
 
「怖かったか? ごめんなァ、遅くなって」
 
 涙の跡をそのままに、猫娘が蒼を見上げる。
 手の温かさに安堵感が戻ったか、人の温もりに孤独から解放されたか。猫娘は掠れる声で尋ねる。
 
「…だ、れ」
「ん? 俺は蒼。蒼坊主の蒼だ。蒼って呼んでくれ」
「ぁお」
 
 ごくり、と猫娘が喉を鳴らした。腰に下げてある水筒を取り、彼女に手渡す。彼女は緩慢な動きでそれを受け取り、少しずつ飲み始めた。
 喉が潤った所で、再び彼女は声を発する。
 
「あお、さん」
「そう。蒼だ」
 
 迎えに来てやったぞ、と告げる。
 猫娘がそれを聞いて、一瞬瞳を輝かせた。
 しかし直後に蒼は「俺も迷ったけどな」と告げる。
 猫娘がそれを聞いて、瞳を輝かせた体勢のまま固まった。
 そしてぎしぎしと首を傾げた。
 
「悪いなァ、俺極度の方向音痴でよ」
「キョクドの、ホウコウオンチ」
 
 取り敢えず望みは絶たれたかと思ったのか。
 猫娘が心底困った様子で蒼を見上げた。そんな彼女に向かって、蒼はそれでも自信満々に告げる。
 
「ま、安心しなって。すぐに応援を呼ぶからサ」
 
 そして蒼はすっくと立ち上がり、霧で見えない空に向かって、大声を上げた。
 
「やっほ~!」
 
 ぎょっとした様子で、猫娘が蒼を見上げる。
 すると、木々に反響した蒼の声が、幾重にも木霊して猫娘の耳に届く。
 それは彼女にとって新鮮な経験らしかった。
 ぴくりと耳を震わす彼女に、蒼はほら、と手を伸ばした。
 
「猫ちゃんもやってみな」
 
 猫娘は蒼をまねて、おそるおそる口元に手をやる。
 そして囁くように言った。
 
「やっ、ほ…」
「違う違う。もっと大きく。腹から声出すんだ」
 
 蒼は再び空に向かって吼えた。
 やっほお。
 それを見た猫娘が、先程より大きな声を出す。
 
「やっ…ほお」
「まだまだ。やっほお!」
「…っやっほお!!」
 
 最後には懇親の力を込めて、その喉から声を張り上げた。
 その時。
 
「やっほ~」
 
 蒼でもなく、猫娘もなく、全く別の声音が響く。
 猫娘がぎょっと肩を震わせた。
 そんな彼女の背中をさすりながら、声の主に向かって蒼は気さくに呼びかける。
 
「よっす! 呼子のおっちゃん!」
 
 気配も音もなくそこに立ち現れたのは、一本足ののっぺりとした顔をした、童姿の妖怪だった。
 
「何度も何度も喧しい。一回呼べば十分聞こえる」
「いやあ、山彦の醍醐味はやっぱ輪唱だろ」
「お前らの場合輪唱じゃなくて絶叫だ。あんだボーズ、また迷ったのか」
 
 あの頃から進歩がねえな、と呟く呼子に、蒼は小さくうるせいと告げる。
 しかしすぐにふと彼に息子が出来たことを思い出す。蒼は世間話ついでに呼子に尋ねた。
 
「倅は元気か?」
「ん。あ~…そろそろ一人でも十分生きてけるな」
「ナァ、そいつ一人前になったら俺の旅同伴してくれる様頼んでくれねぇか?」
 
 手を合わせて頼む蒼に、ん~と感情表現の薄い顔が傾く。
 
「別に俺は構わねぇけどよ、あいつ極度の恐がりだからな。封印巡りなんておっかながってやらねぇだろ」
「まま、そこを何とか…」
 
 と世間話に花を咲かせる合間に、蒼は気付く。
 きょとんと突然の来訪者に驚く猫娘に。
 
「わりわり! 猫ちゃん、こいつは呼子って言ってな。山彦の化け物だよ」
「変な紹介の仕方すンな…お、こいつ最近横町に来た仔猫じゃねぇか」
 
 砂かけが大層心配していたぞ、と告げる呼子に、猫娘はぴくんと尖った耳を動かした。
 金色の瞳がきらりと輝く。
 
「すなかけ…おばば…」
「おう、すぐに会わせてやっからな」
 
 呼子のおっさん、案内頼まぁ。
 右手を挙げて敬意の感じられない頼み方をする蒼に、呼子は一瞬皿の様な目を嫌そうに細める。「お前、生意気になったな」呟く彼に蒼はけらけらと笑みを零す。
 どんなに文句を言おうとも、ここにか弱い幼子がいるのだ。あの時自分を助けてくれた様に、子供に甘い呼子は案内を決して断りはしない。
 さあ行くぞ、と猫娘を促すと、彼女は慌てた様子でその場に立ち上がった。
 しかし、膝が抜けた様にその場に崩れる。
 ぽす、と再びお尻を付いた猫娘に、蒼は一瞬怪訝な顔をした。そしてようやっと気付く。
 
「ああ、そうだよなぁ。もうへとへとだよなぁ」
 
 配慮の足りない自分を恥ながら、蒼は猫娘の小さな体を抱き上げた。
 驚く程冷え切った体。
 目を丸くしてこちらを見つめる猫娘に、蒼は心底申し訳ない気持ちになって頭を下げる。
 
「こんな冷えて…安心しろ。後はゆっくり休んで良いからな」
 
 包み込む様にして小さな体を抱きしめ、蒼は歩き出す。
 初めはかちこちと緊張した様子で袂を握り締めていた猫娘。だが徐々にその緊張も解け、こっくりこっくり船をこぎ出す。
 ぽんぽん、と背中を叩いてやったのが最後だった。
 
 猫娘は蒼の腕の中で、静かな寝息を立て始めたのだった。


--次でラスト
※「呼子のおっさん」は超勝手なオリジ設定。(土下座して謝ります)今長屋に住む呼子に父親がいて、それが蒼の幼少期に彼を助けてくれた妖怪だったら良いななんて爆
 性格はどことなく二部のあの気味悪い呼子をイメージして描きました死
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読ませていただきました
大和 URL 2008/06/09(Mon)20:31:23 編集
「君と初めまして」のお話、読ませていただきました。
イラストだけではなく、文もお上手なんですね。楽しく読ませていただきました。
次がラストですか?
楽しみに、待ってます。
(大和のPCは、蒼猫、黒猫変換してくれます(笑))
RDGブログにメッセージ有難うございます
shino 2008/06/09 21:01
こんにちは、大和様! RDG管理者の矢野です。
先程間違ってそのまま返信してしまい申し訳ありません!;;
ブログへのコメント、真に有難うございますvv
っっっていうか大和様そんなっっ褒め上手っっっ!!/////
は、恥ずかしくて顔向け出来ません;; あんな作品でも嬉しいお言葉、本当に有難うございます!
はい、次でラストです!ちょっとごたごたしてて後の話になりそうですが、よろしかったら期待なさらずお待ちください。
おおっ!そして大和様のPC、黒猫も一発変換出来るとは!!
ハイレベルですね!もう究極体に進化ですね!!
何やら非常にお話が合いそうなご様子vv 今度蒼猫トークでもどうでしょう!ブログに幾らでも蒼猫の愛を綴ってくださいませ!
それでは、乱文となりましたが今日はこの辺りで。
またよろしかったらRDGにお越しください! 
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