MH祭~夢草紙~第3幕。
今回は主催者自らがお送りさせていただきま……あ、ちょっと待って、石投げないで。
いやそりゃ他の皆様の作品見たいのはわかるけどちょっと待って!
ええ、それで今回はオリジナルで……あでっ! だれビール瓶投げたの!?
そんなこんなで「つづきは~」でお送りします。
口笛::
口笛が聞こえる。毎夜、夢の中で。
別に何かのメロディではない。ただ、隙間から漏れる風のようなものが聞こえるのだ。
どんな夢の中でも。ひゅー、と。寂しげに。苦しげに。
自分の呼吸の音とも思った。妹の寝息とも感じた。
しかし偶発的なものとも思えない。
その日の夜もやはり聞こえる。
すきま風にも似た、小さな音。ひゅー、ひゅー、と……規則正しく。
ある日の朝、目の下にくっきりと隈を浮かべて妹が言った。
「お姉ちゃん、ベッド変えて貰おう」
私たちは二段ベッドに寝ている。妹は上、私は下。
上が良いという妹の我が儘を聞いてやったのはつい最近のことだ。リフォームと共に買い換えて貰った二段ベッド。買って貰ったのはちょうど3週間ほど前のことだった。
突然何を言い出すのかと私は怪訝な顔で妹を見た。買ったばかりの二段ベッド、新品ではないが、やはりそこそこ値は張る。3週間ほどで買い換えて貰えるほど家は裕福でもない。
しかし妹は、私以上に理解できないと言った表情で私を見る。
「気付いて無いの?」
何を。
尋ねる私に答えた妹の顔は必死だった。
「何で? うそ、ずっと知らずに寝てたわけ?」
信じられない、と妹は頭を振った。
些か狂気じみたその行動に、私は妹の肩を押さえながら尋ねる。だから、何を。
先ほどよりも青い顔をして、妹はふとすぐ側の二段ベッドを見た。
彼女は自分の手を掴むと、部屋を飛び出て廊下に出る。そして声を潜めて――しかし鬼気迫る様子は変わることなく――私に告げた。
「ベッドの脇で何かがお姉ちゃんを見てるの。ひどい時は覗き込んで見ているんだから」
たった一度だけ見たそいつの顔は、お面のように真っ白で、中央に黒い穴があったと言う。
のっぺりした顔の中央に、小さく。
そう言えば3週間ほど前からではないか? あの音が聞こえ始めたのは。
「ひゅー」と言う、掠れたあの音を思い出す。
あの音はそこから漏れていたのか。妙に冷静な頭で、私は納得した。
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何をするでもなく、じっと、それは自分を見つめる。