かなし うらめし うらやましい::
むっつりといつになく苛立った様子で、ディンゴは町を歩く。そんなオペレーターに苦笑を漏らしつつ、『次の角、左』とトマホークマンは指示を出した。いつもなら我らが守り神トーテム様のお導きか…否、彼の場合あふれ出す野生の勘のみで道無き道を突き進むディンゴだが、今回ばかりは大人しくトマホークマンのナビを受けている。
それもその筈。なんたってトマホークマンの元には一通のメールが。
―――彼の幼なじみ、シャンカからのメールがあるのだから。
「ったく……何でオレがシャンカの観光に付き合わなくちゃなんねーんだよ……」
とうとうディンゴがぽつりと零す。それに答えたのは、トマホークマンではない。何とトマホークマンの隣…則ちディンゴのPETにいる桃色のナビ――ロールだ。
『シャンカさんは日本に慣れていないんでしょ? 幼なじみのディンゴさんがアキバシティを案内するのは当然じゃない?』
後ろに手を回し、彼女は肩を竦めてトマホークマンを見る。同意を求められたトマホークマンは、代わりにディンゴを見上げて肩を竦めた。
『だ、そうだ。今回のお前はシャンカのナビ兼ボディーガードなんだよ』
『そうそうっ』
誰よりも楽しげにロールが相槌を打つ。そしてこそ、と己のオペレーターに報告しているのを、トマホークマンは見逃さなかった。無論、ディンゴの方は全く気付いていないのだが。
実はサーチしてみると、ディンゴから約10メートル離れた地点にロックマン、アイスマン、ガッツマンの反応がある。今回有名な観光スポットを教えて貰うため、メイルから特別にロールを借りている訳だが、どうやら好奇心旺盛な彼らは自らその様子を見に来たらしい。
全く、暇な奴らだと内心悪態をつきながら、トマホークマンはディンゴに最後の指示を出す。
『で、次を右。後真っ直ぐだ。シャンカはそこで待ってる。後はお前、俺達は道案内しかしねぇからな。ちゃんと一人で上手くやれよ』
「うるせー! 言われなくてもわかってるっつの!」
地団駄踏むディンゴに笑いかけ、トマホークマンはロールを見る。
おそらく懸命に聞き耳立てて様子を伺っている、彼らの姿を思い浮かべながら。
その中に、ちゃんと青色のナビがいる事を知りながら。
そして目の前のこいつが、その青色のナビに想いを寄せている事を知りながら。
―――敢えてトマホークマンは皆に聞こえる様に言う。
『ってな事で、俺達は俺達で楽しもうぜ、ロール!』
ダブルデートみたいじゃねーか。
自分でも良くそんな言葉を知っていたな、と思いつつ彼女の肩を抱いてみれば、彼女は途端こぼれ落ちそうな程目を見開いてこちらを凝視した。
かと思うと、その体に負けないくらい桃色に染まる白い頬。
『な、何言って……!』
『やー今日は邪魔者はいないし良い日だな本当にー!』
数メートル後方で、「落ち着けロックマン!」『止めないで熱斗くん!』などと騒ぐ声が聞こえる。それが妙に気分を浮き立たせる。
ほろ酔いしているような良い気分だ。
こんな時くらい許せ。
彼女の細い肩を抱きながら、トマホークマンは彼女の想い人に心中小さく舌を出して見せるのだった。
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何が書きたかったってたぶんディンゴとシャンカの関係をっっ……!!!!
本編でもっと接点あれば良いのにこの二人!
ちなみにタイトルはたぶんロックマンの心情……かと。