ミクロピュアラブ祭第14弾!
今回はRDGに初出場! 花鶏様が参戦してくださいました!
題は「そこにかくして」
五期鬼太郎でCPは何とRDGでも大プッシュ☆の蒼坊主→猫娘!
やって参りましたバレンタインデー。
勿論横丁も大にぎわいで、偶然その日に帰ってきた蒼坊主は……
彼女の気持ちをわかっているからこその切ない思いっっ…!
花鶏様の素晴らしい作品は、「つづきは~」からどうぞご覧あれ!
<そこにかくして>
好きな子にチョコレートをもらったのに、この切なさはなんだろう。
「はい、蒼さん。」
にっこりと、猫娘が笑って、彼女の頭のリボンと同じ色のリボンが巻かれた小箱を蒼坊主に差し出した。
「おう、猫ちゃん、ありがとよ。」
礼を言って受け取れば、猫娘がふふ、と嬉しそうに笑った。
「蒼さんタイミングいいんだもの。多めに作っておいてよかった。」
あ、でも別に余りものってわけじゃないのよ、ええっと、と慌てて付け足す猫娘がなんだか可笑しくて、蒼坊主はわかってらぁ、と猫娘の頭を撫でた。
「それにしても今日はばれんたいんだったのか。すっかり忘れてたぜ。」
人間の街や、横丁を包む甘い匂いに、首をかしげていたものの、合点のいった蒼坊主は苦笑いしながら頭を掻いた。ただ、横丁に漂う匂いの中に、人間の街では嗅がなかった、なんというかこう、和風な、もち米とか餡子的な匂いや、それバレンタイン用じゃないですよね、大丈夫ですよね、と突っ込みたくなるような何かが焦げているような匂いが混じっているのが多少不安を誘うが、そこら辺は黙っておこう、と蒼坊主は思った。さっきアマビエが、生魚と板チョコを嬉しそうに抱えていたことも。
「まあほんとは、人間の行事だもんね。でも一回渡したら、毎年催促されるんだもの、まったく。」
用意するこっちの身にもなってほしいわ、と、大きな紙袋を少し持ち上げて、猫娘が呆れたように眉を下げた。はは、と蒼坊主も笑う。そうは言っても、紙袋からのぞく、色とりどりのラッピングが丁寧に施されたそれらには、猫娘の横丁の仲間に対する労わりや感謝の気持ちがこもっていることがわかる。まあそこらへんは、バレンタインの本来の主旨からは外れてはいるのだろう。けれど、今自分が持っているこの小箱だって、そのはずれているもののひとつなのだから。そう考えれば、蒼坊主はどこか乾いた笑いを続けるしかなかった。
「あたしあと何人かに渡したら鬼太郎のところに行くけど、蒼さんはどうするの?」
猫娘が尋ねてくる。蒼坊主はうーん、と腕を組んだ。鬼太郎親子のところには一度寄ったが、横丁のみんなに挨拶をしてからまた会いに来るとは言ってある。だから一緒に行ってもいい。行ってもいいのだけれど。
「…いや、俺はもう少し寄る所があるから、先に行っててくれ。後で鬼太郎のところに行くからさ。」
蒼坊主がそう言うと、猫娘はそっかぁ、じゃあまた後で、と言って、軽く手を振って鬼太郎の家の方に歩いていった。おう、と蒼坊主も軽く手を降って、その背中を見送った。小走りし始めた猫娘の、ピンクのリボンが揺れている。
蒼坊主は、手の中の小箱を見た。しゅるしゅるとリボンを解いて蓋を開ければ、まるいコロコロとした、白と茶色のチョコレートがいくつか入っていて、見た目からも美味しそうだった。ふんわりと軽そうな、形の整ったそれは、猫娘が丁寧に作ってくれたことがありありと伝わってくる。それだけでとても嬉しい、けれど、
(やっぱ違うんだよなぁ。)
猫娘が持っていたあの、紙袋のなか、あの底には、他のとは違う想いのつまったものがある。たったひとつのそれは、目の前のチョコレートと同じものからできていても、蒼坊主にはけして味わえないもの。あの、赤い髪を結んだピンクのリボンの、これから向かう先の、あの青が、
(違うんだよなぁ、)
蒼坊主は苦笑いを浮かべて、チョコレートをひとつ、口に入れた。少し苦い、ココアパウダーの味はすぐに、濃厚なチョコレートにかき消されて、甘ったるい味が舌に残った。いつまでも消えないそれは、ピンクのリボンを強く握るその手の感覚に少し、似ていた。
<end>
--
わっっっ……私もものすごく切ないっっ…! 蒼兄さんっっっっ!!!!!//////
とうとうMPLで蒼猫まで出てきて私もう万々歳! 本当に思い残す事無いです。このままのたれ死んでも悔いないです。悔いはない……何ですけどものすごく切ない!
切ないからこそ良いっっっ!!!!
胸の内に切なさを秘めつつ、それでも普通に猫娘と接する蒼の大人っぽさ、男らしさにもう悶絶でした!
花鶏様、素敵な作品をどうも有難うございましたvv