ミクロピュアラブ祭第13弾!
なんとなんと! 先日も素敵な幻水作品を提供してくださった大和様が、またこの祭に参戦してくださいました!
題は「潮風とバンダナと…」
驚く事無かれっつーかむしろ私が大興奮ですよ!
何と幻水Ⅳのポーラ→Ⅳ主ですよっっっっ!!!!!!
ポーラですよっっっっ!!!!!!(落ち着け
4主の名前は「リーフ」さん。
エルフと人の間にある確執……己がエルフである事で、自分の想いを打ち明ける事に恐怖するポーラ……
己の哀しい性と、本当の気持ちの間に蔓延るジレンマ…!
心痺れる大和様の素敵ssは「つづきは~」からさあ! クリックプリーズ!
「潮風とバンダナと…」
小さな流刑船の甲板に、リーフが立っていました。
辺りはすっかり夜の闇に支配され、星が瞬き、海は暗く静かに波をたてています。時々、波が星の光を反射して輝く他、周囲には何の光源もありません。私はまどろみから覚醒し、静かに立っているリーフを見つめました。
潮風に、リーフのバンダナが揺らめいています。少し淋しげな背中が、私の心に何かを訴えました。
「リーフ」
私は訴えてきた何かに従うように、リーフの許に歩み寄りました。
「ポーラ? どうしたんだい。眠れないの?」
「そうではないわ」
私は緩やかに頭を振って、リーフの隣に立ちました。
「あなたが何だか……淋しそうだったから」
――私では上手く話し相手にはなれそうもありませんが、それでも、隣で淋しさを分かち合える事は出来るのではないか、と、思っていました。
リーフの見ていた先は、何処なのでしょう。
夜の海は方角も分からず、私たちが今何処にいるのかも本当はよく理解してはいません。流刑船は罰を受けた者が目的地を選べずに流されていくままに従って波間を漂うもの。でも、私にはリーフが見つめていた先はラズリルなのではないかと思えて仕方がありませんでした。
ラズリルの――ガイエン海上騎士団がある方角だと……。
ガイエン海上騎士団の館の中庭は、私たち騎士団員が集まり、修練をしたり団長からの訓示を受ける場所です。常に誰かしらの人が居ます。私とジュエルもその内の一組で、過日、晴れて騎士団員となれた私たちは、他の先輩方と違ってそれ程仕事を頂ける訳でもなく、暇を持て余しているのにとても近いものでした。
「あーあ。ホント、暇だっ! ねぇポーラ、模擬戦しよ?」
褐色の肌と明るい双眸を持つジュエルは、私とは正反対の明るい性格と快活な言葉を持っています。彼女は、私が――エルフであっても他の人と同じように接してくれる心優しい女性です。
「そうね。――でも」
ジュエルに軽く笑いかけながら、私は中庭の入口を指差しました。ジュエルも、私の指の後を追って後ろを振り向きます。
ガイエン海上騎士団は潮の香りに包まれ、遠くに波の音が常にあります。海がとても近いのだから当然です。その海から、今、帰ってきたばかりの人影が私たちの目に映りました。
隣島――ミドルポートからたった今戻ってきたばかりの、私たちの同期です。
晴れやかな笑顔を見ると、どうやら無事に務めを果たしたみたいです。私は、心の中でほっと息を吐きました。
タル。ケネス。スノウ。そして――リーフ。
三人の後ろを静かについて歩くリーフの姿を見付けた時、私の胸にふわりとあたたかなものが溢れました。私には分かります。今回の務めを果たすに、彼がきっと誰よりも頑張ったであろう事が。それなのに、彼はその事をもって自分を売り込む人ではなく、もっと謙虚に、もっと自分を隠してしまう。
こんな人もいるのだ。私は、初めてリーフを見た時から、ずっと彼ばかり見つめている自分に気付きました。
天涯孤独の少年。ラズリル領主フィンガーフート伯に育てられ、その息子のスノウにまるで小間使いのように扱われながらも、決して自らの不運を嘆かない強い少年。
それに――才能もあります。
グレン団長もリーフを認めていらっしゃる事を、殆どの人が知っています。只、孤児故、寄宿舎にも入れないで私たちとは違う扱いをうけています。
――ああ。スノウがとても嬉々としてしゃべっているわ。
「スノウ、やっぱカッコイイなぁ」
ぽうっと頬を染めてジュエルがスノウを見ています。私には、それがよく分かりません。いえ、きっと私には分からないスノウの魅力をジュエルが知っているのだと――思いたいです。
リーフたちが館の中に入っていくのを、見ていました。リーフのさらさらな髪と額を飾る赤いバンダナが、潮風に揺れて、とても、綺麗に見えました。
「――ねぇ、ポーラ」
突然、ジュエルが私の腕を肘で突いてきました。
「何?」
私はジュエルを見ました。好奇心に輝いた目が、私をじっと見ています。
「あんた、リーフの事好きでしょ」
あけすけに、はっきりと言い切られてしまいました。
私は――自分がどんな顔をしているのか分かりません。只、胸が大きく高鳴り、首から上がカッと熱くなり、頭がくらくらしました。
「あら、図星!」
ジュエルの声が、少しだけ遠いです。私の心音の方が耳に強く響いていますから。
私は――俯いてしまいました。
「やだポーラ、可愛い! 普段クールぶってるあんたに、こんな可愛らしい一面があったなんて。あははっ。女の子だねぇ。青春だねぇ」
カラカラと笑うジュエルの声。私はその時初めて周囲を見ました。ジュエルの声は本当に大きいのです。よく通る笑い声は、周囲に居る騎士団員にも充分聞こえています。聞こえて……いるのです。
「ジュエル!」
私は咄嗟にジュエルの口を塞ぎました。
今や私たちは注目の的です。ジュエルの大声は、私の胸の中を大っぴらに公表しているようなものです。
私は、まだ知られたくないのです。
みんなに、それに、リーフに。
人ではない、エルフである私の気持ちを、まだ知られたくはないのです。
私は、ジュエルのように好意を前面に出せるような性格ではないのです。
「お願いよ。これ以上は、ね?」
「ポーラ」
私の懇願に、ジュエルは少しばかり呆れたような口調になりましたが、仕方無いな、と呟いて頷いてくれました。
私は念を押すようにジュエルを見つめ、そして、手を放しました。
「――ふう。息が詰まるかと思ったよ」
「ごめんなさい」
「あははっ。――でも、ポーラ」
ジュエルが急に真面目な口調になりました。「心の中だけに仕舞っていたら、いつまで経っても相手に気持ちが伝わらないよ? 時にはガツンと相手にぶつかっていく位の勇気を持たなくちゃ、ね」
ジュエルは、身分や生まれや立場を超えていつも話をしてくれます。私が何を気にし、何をこだわっているのかも、よく知っています。でも、それでも、尻込む事は可笑しいのだと私に伝えてきます。
強いジュエルの眼差しに、私は静かに頷いてみせました。
そして、私は今ここに居ます。
リーフの無実を証明する為に、私の持てる力を全てリーフの救済に使う為に。
リーフが乗る事になっている小さな流刑船に忍び込んでいた私と、そしてもう一人を見付けた時のリーフの顔は、驚きと、喜びに満ちていました。
――今、私たちは並んで夜の海を見つめています。
「有難う。……ポーラ」
そっと言ってくれたリーフの穏やかな笑顔が、私には何よりも嬉しいのです。
潮風とバンダナと、そして、あなたの笑顔。
私は、あなたを守りたいのです。
<fin>
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もう先日の炎ロルとか坊オデとか皆様何ですか!
私への何のサービスですかっっ!!!????(違えーよ)
あああああああ何度見ても大興奮の流刑イベント!!!!!
これをまさか大和様が描いてくださるとはっっっ…! しかもポーラに取っては永遠のテーマ、エルフと人間の確執まで……! 回想シーンのジュエルとポーラのやりとりにも悶えますっっ////
ものすごい表現力! 流石大和様です!
本当に素敵な作品を有難うございましたvv 大和様~~~~~家宝にしますううううううっっ!!!