2009/02/04 (Wed) 09:54
ミクロピュアラブ祭第二弾!
今回はヒノ様がいっきに二作も提供してくださいましたvv
まず一つ目がこれ、「ひとつ恋が消えてしまったの」
三期鬼太郎 CPは猫娘→鬼太郎です!
猫娘が出逢った少女…バス停で泣いてるあの子は一体…?
気になる方はさあ、「つづきは~」から!!
【ひとつ恋が消えてしまったの】
泣いていた。
かすかに散った涙の雫に猫娘は通りすがって行く少女に振り返った。
「・・・・あの子・・・・」
見覚えがある。
延々坂道の続く道の途中にあるバス停で、何本もパスを見送っていた女の子。
最初に気づいたのはいつだったのか。
あれは鬼太郎とともに一反木綿に乗ってゲゲゲの森に帰る途中だったような気がする。
夏の暑い日で、幅広のおおきな白の帽子とこれまた真っ白な清楚なノースリーブのワンピースが印象的だった。
風に揺られるスカートがまるで百合の花を思わせた。
それ以来、たびたびそこを通ると彼女の姿を見かけるようになっていた。
でも、夏が終わったとき、それはぱったり見かけなくなった。
あの子がいま、此処にいる。
それが猫娘に思わぬ行動を起こさせる。
「あ、あのっ」
後ろ手に掴まれた衝撃で驚いて振り返る女の子。
やっぱりあの子だ。
色白の肌は紅色に真っ赤に染まっていて、それがこの冬の寒さのせいじゃないことは涙に濡れた瞳が物語っている。
驚きで涙が止まってしまったのか、鼻を啜り、ひとつしゃっくりをして、少女は目を瞬かせた。
「あの・・・何か?」と口が動くが、かすれて声にならなかった。
それを引き継ぐかのようにまた、鼻を啜った。
猫娘は慌てて掴んでいた手を離した。
「ご、ごめんなさい。急に掴んだりして。・・・・その、あの・・・何かあったの?」
その言葉に少女は慌てて自分の濡れた顔をコートと手袋に包まれた腕で拭う。
「前にね、あの坂の途中のバス停で立ってたのを見たこと・・・あったから・・・・」
「み、てたんだ・・・やだ、恥ずかしいな・・・・」
そう言った少女はまだ濡れた顔だったが、恥ずかしそうに笑っていた。
「好きな人・・・いたの」
誰もいない公園。
冬は陽が落ちるのも早い。
まだ夕方だというのに辺りは夜かと見間違えるほど真っ暗だ。
二人してベンチに座り、途中の自販機で買ったホットを口にする。
少女はミルクティ。猫娘はおしるこを選んだ。
猫舌なので飲むより手を温める方に優先している猫娘はおしるこの缶を両手で包み込むように持って、少女の話を聞いた。
遠いところへ引っ越していった彼。
休みが来たら遊びにくるよと二人で約束した。
「・・・・・・・・幼馴染だったの・・・・・」
猫娘は息を飲んだ。
少女は遠くを見つめるような眼差しで膝元に置いたミルクティを見ている。
「ずっとね、ずっとね、好きだった。
親同士が仲良くって、おんなじ時期に子供が出来て、家族同然に育った。
りっちゃんはあたしをいつも守ってくれて、泣き虫なあたしをいつも怒ったような口調で慰めてくれた」
ぽつりぽつり少女はその幼馴染りっちゃんという人の事を話す。
とても優しい眼差し。
少女の口調にいかに彼女がその幼馴染が好きかがうかがえる。
恋する女の子は可愛らしいと聞くが、思い出に頬を染め、花のように綻ぶその顔のなんと愛らしいことか。
でもその顔が一気に冷たいものに変わる。
「・・・・・・・・・好きな人、できたって」
高校の受験真っ只中。
受験通知と一緒に入っていた手紙を読んだとき、これまで積み重なったものが一気に崩れ落ちた気がした。
「おんなじ高校に行こうねって言ったのに・・・・向こうに好きな人が出来たから、そこで受けるって」
ぽた、ぽた・・・と伏せた面から大粒の涙が零れて弾けた。
ありがとう、話聞いてくれて。
そういって少女は猫娘にお礼を言って帰って行った。
結局、名前も聞けなかった。
「猫娘」
ハッと顔をあげると黒と黄色の縞のチャンチャンコを着た少年が立っていた。
この寒空で彼だけは常の学童服にチャンチャンコ。素足に下駄履きだ。
それでも寒さは一応感じてるのか、首には猫娘が送ったクリスマスプレゼントのマフラーが巻いてある。
それを見て、猫娘はこみ上げる嬉しさに胸が熱くなる。
「き・・たろ・・・」
ぽろっ・・・ぽろ、ぽろ・・・・
猫娘の大きなアーモンド型の瞳から大粒の水晶のような涙が零れ落ちる。
ぎょっとしたのは鬼太郎の方だ。
この寒空に一向に姿を見せない猫娘が気になって、妖気を探ってみたらばこんな人間界でひとりぽつんといる。
時刻はもうとっくに九時を回っているし、子どもの姿である彼女がこんな時間に公園にいるのは不自然だ。
だから迎えにきたのに、いきなり自分の姿をみたら泣きだすなんて・・・!!
こういう状況に慣れてない鬼太郎は一気にフリーズした。
な、なんて声かけりゃいいんだっ!?
何かあったのかい?ハニー。
違うっ!
セニョリーター、泣かないでおくれ。
いい加減にしろっ。俺の脳内。
俺は髪を横に靡かせながら菊池○美の声で気障なセリフを吐く小学生じゃないんだよっ。
パニックに陥り、真っ白になった頭の中で繰り広げられるおバカなボケに自分でツッコミを入れ、忙しい鬼太郎に気づかず、猫娘はあわてて零れた涙を拭う。
「ご、ごめん・・・ね」
謝られても困る。
だらだらと冷や汗を流しながら、鬼太郎は身動き一つ取れない。
すんっ、と鼻を一つ啜り、猫娘は立ち上がる。
空を見上げた。
冬の夜空は高く、どこまでも澄み切った暗闇。
その中で星が白く輝いている。
まるでガラスを散りばめたかのようだ。
「あのね・・・・・、恋が・・・ひとつ、消えちゃったの・・・・」
吐く息が白い。
あの子は笑った。
それはこれ以上心配かけまいとして笑ったものだったかもしれないけど、なんだか次に進むための笑顔だったように思える。
あたしは・・・・。
あたしは、あんなふうに・・・・・笑えるだろうか・・・・?
鬼太郎の方を見ると、彼は困ったような怒りたいような複雑な顔でこちらを見ていた。
くすりと笑う。
「帰ろっか、鬼太郎」
今はまだ、こうして傍にいられる。
でも、いつかこの手を離すときがくるのかもしれない。
その時、自分はいったいどんな表情をしているのか・・・・。
猫娘は鬼太郎の手のぬくもりを感じながら、再び夜空を見上げた。
願わくば、刻が止まってくれることを祈って。
<完>
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戸田の焦り具合が可愛い…vv 以前に三田猫のこの切なさ…!
いつだって三田猫は不安の中、鬼太郎を想っているんですね…///
バス停って所が春っぽい! MPLっぽい!
ヒノ様、素敵な作品有難うございましたvv
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