ミクロピュアラブ祭第5弾!
皆様お待ちかね! MH祭でも様々なジャンルで我々を魅了した大和様が今回もいらしてくださいました!
何と今回は幻想水滸伝っ…
坊→オデッサですっ!
坊ちゃんの名前は「ボウ・マクドール」。
解放戦争の始まりであり、主人公が軍主になるきっかけでもあったオデッサ…
そんな彼女との突然の別れの前に、ボウは…
この続きはどうぞ!「つづきは~」から!!
「つめたい 水」
「さよならだ……オデッサ……」
ビクトールの呟きが、今も頭の中で響く。
地下水脈の幽くつめたい水の中に静かに沈んでいく、少し赤味がかった栗色の髪。陶器よりも白い顔。固く閉ざされた双眸は、もう笑いかけてくれない。まるで、彼女は「生贄」と同じ。解放軍が大きくなるための、生贄。
オデッサ・シルバーバーグ。
その考え方に惹かれ、その行動に惹かれ、その優しい瞳に惹かれた。
僕の……初恋の人。
――ちくり。と、右手の「ソウルイーター」が、やけるように痛い。
僕が引き継いだ解放軍は、オデッサの死の後、彼女の遺言の通りあれから彼女の兄、マッシュ・シルバーバーグを迎え、随分と大きくなった。トラン湖に浮かぶ古城。今僕たちが居を構えている難攻不落の本拠地には、次々と仲間が集まる。
「オデッサ様はどこに……?」
と、僕に言ってくる人もいる。
「オデッサは訳があってここにはいません。今は、ボウ・マクドール殿が代わりをお勤めになっています」
と、僕が言葉に困るとマッシュが代わりに答えてくれた。
オデッサの死を知らない人が掛けてくる言葉を耳にする度に、僕の心は晦くなる。
オデッサは……皆が憧れている彼女は、もうこの世にはいないんだ……!
何度も我を忘れて叫びたくなる。
オデッサはもういないんだ。オデッサの名をそんなに呼ばないで。そうじゃないと、僕は……。
――トラン湖に雨が降る。
僕は見張り台に一人登り、ぼんやりと雨に烟るトラン湖の灰色の景色を目に映していた。雨に濡れ、服が冷たいと感じるのは、まだまともな感覚が残っているからか。
「ぼっちゃん、中に入りましょう。風邪をひいてしまいますよ?」
グレミオの声が、雨の音に交じって僕に届く。
「うん……」
僕は頷くだけ。
オデッサはこの雨よりつめたい水の中に身を隠したんだ。解放軍の勝利を信じ、未来を信じ。
「リーダー」
いつの間にか隣に青いマントの青年が立っていた。
フリック。
オデッサの――恋人。
「あんたに何かあったらオデッサが悲しむ。グレミオの言う通り中に入るんだ」
少し見上げる位背の高いフリックの前髪は雨に濡れ、その目を隠している。彼がどんな表情をしているのかを読み取る事は難しい。青い衣は嵐青の深みを増し、フリックの戦士の肩の形を浮き彫りにさせる。
僕の細めの肩とは、違う。
「そうだね……」
僕はフリックから目を逸らし、背中を向けた。
「フリックの言う通りだ。僕はオデッサを悲しませる為にいるんじゃない」
「そうだ。……ボウ」
フリックが僕の名前を呼んだ。
カチャっと音がする。振り向くとフリックが剣を胸許で持ち、その切っ先を天に向けている。
ああ、これって――戦士の誓いって奴だったっけ?
「お前がオデッサを惚れてくれた事、オデッサの死を悼んでくれている事、俺は嬉しく思う。オデッサもまた、お前の気持ちを喜んでくれている筈だ。俺には――分かるからな」
剣を一度縦に振る。雨粒が躍り、鈴のような清らかな音が聞こえたのは、空耳か?
「我が剣――『オデッサ』にかけて誓う。俺は必ずお前を守り抜いてみせる。お前の中に見出したオデッサの希望の光と共に」
雨の中、戦士フリックは僕に誓った。
嗚呼、オデッサ。
あなたは名も知らぬ子供の為に命を落とし、幽くつめたい水の中に身を隠した。
あなたと同じつめたい水の中――雨に打たれながらあなたを想い、あなたに近付こうと思った。
――でも。
僕はやはりあなたを永遠に憧れ続ける者のままで、僕の道を歩まねばいけないんだね。
オデッサ――あなたに笑われないように。
<fin>
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せめてもう少し長く、彼女と一緒にあれたなら~~~~~っっっ!!!!
あんな所で突然死を迎えた彼女…そして突然このとき解放軍の軍主になってしまったボウ…もう色々切なすぎて、涙なしでは読めない作品!
なんとこれで幻水は初書きとのことっっ…!
ややややはり大和様、すっげえええええええええ…!!!!
MPL初の幻水作品…この調子でばんばん他ジャンルも募集中☆
大和様、本当に素敵な作品を有り難うございました!