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夢捨て場
日常報告及びネタ暴露専用のブログです
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2009/02/04 (Wed) 10:07

ミクロピュアラブ祭第三弾!

今回もヒノ様の作品!
「望みは高く限りなく」
三期鬼太郎 鬼太郎→? だそうですvv

偶然町で鬼太郎を見かけた夢子ちゃんが見た物は!?
鬼太郎が誰を想うかは、皆様のご想像にお任せvv
素敵なssは「つづきは~」から!


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【望みは高く限りなく】







木枯らし吹きすさぶ冬。

店内にいた時はちょうどよかったのに、外に出たとたん身を切られるような冷たい風に晒され、ユメコは肩をすくめて身を縮めた。

こんな日の買物はさっさと終わらせて、家路に戻りたくなる。

「・・・・・・・・・あら?」

目線の先に見慣れた黒と黄色のチャンチャンコが見えた。

「・・・・・・鬼太郎さん?」

見間違えるはずもない。

ユメコは足を止め、不思議そうに首を傾げた。

ここはお洒落なブティックや雑貨屋、飲食店などが並ぶ若い女性向きのショッピング街だ。

街並みも華やかで、通り過ぎる人は圧倒的に十代から二十代の女性が多く、カップル連れも目立つ。

そんな中で彼のような少年はいささか場違いな気がした。

彼はユメコが見ているとも気づかず、なにやら熱心にショーウィンドウを見ていた。

声をかけようと思ったが、その前に彼はスッとユメコに背を向け、カランコロンと下駄を響かせ、立ち去ってしまった。

最後までユメコには気付かなかったようだ。

アンティークの街灯がお洒落な石畳の雑踏に紛れるように消えてしまった背中を目で追いながら、ユメコは彼が何を見ていたのか気になってそこへ行ってみた。

大きな一枚ガラスの向こう側は華やかなムードに包まれていた。

雑誌にもたびたび掲載される人気の高い洋服やバッグ、靴などを取りそろえている、ユメコも憧れるブティック。

何度も足を止めては魅入ったこともある。

中は若い女性ばかりで、どう見ても鬼太郎のような男の子に興味があるようなものが一つもない。



彼は何をあんなにも熱心に見ていたのだろう。



彼が興味を惹かれるものを探して、ユメコはあちらこちらに目を走らせていたユメコはハッと息を飲み、パタパタと足音を響かせて雑踏に紛れ込んだ。









「絶対にあれはそうよっ」

「ええ~?いくら鬼太郎でもそれはありえないよぉ~」



ユメコにしっかりと腕を抱きしめられ、引きずられるように連れてこられた猫娘はいかにも信じられないと言わんばかりに口を尖らせた。

件のブティック。

ゲゲゲの森に着いたユメコはちょうど鬼太郎の家に行こうとしていた猫娘を見つけるなり、強引にここまで引っ張ってきていた。

「だって、こんな所よ?鬼太郎さんに用事があると思う?」

「う~ん・・・・」

ブティックの中を覗いた猫娘は唸る。

可愛らしい洋服がたくさんある。

今年のコートはふわふわの手触りの良さそうな丸みのあるファーが人気があるらしく、女の子らしくパステルカラーの色とりどりの種類がある。

かといえばモデル並みに美形のマネキンが黒の革のような光沢のあるロングコートと同色のロングブーツを気取ったポーズで着こなしていて、ここから見るだけでも楽しめる。

中は休日ということもあって若い女の子たちでいっぱいで、二人が覗いている間も客の出入りが激しい。

たしかにこんな所に鬼太郎が来るのは珍しい。

珍しいというか・・・ありえないんじゃなかろうか?

値段も見ている分には良いが、買おうと思ったら少し勇気がいる。

誰かにプレゼント・・・・とも考えたが、それは真っ先に取り消した。

どう考えてもそれは絶対にありえない。

だとすれば、やっぱり・・・・・と、猫娘はユメコが指さす方を見つめる。

そこにはてきぱきと働く女性の姿。

店内には幾人か女性店員がいるが、いちばん目を引く店員。

「ね?鬼太郎さんの好みだと思わない?」

美人で年上で巨乳・・・。

それ以上に彼女には何か慈愛のような優しさが漂う。

そのせいかよくお客に声をかけられている。

母親のいない鬼太郎は、こういった女性に弱いところがある。

「・・・・・たしかに・・・・・」

「あれ?ユメコちゃんに猫娘」

「鬼太郎さんっ!?」

「きたろう!?」

横合いから声を掛けられ驚く二人に、鬼太郎はにっこりと笑った。

「どうしたの?二人一緒なんて珍しいね」

「そんなことより、鬼太郎さん」

彼の言葉を遮り、近づいていくユメコに猫娘はぎょっとする。

驚く猫娘を尻目にユメコは大胆にも彼の腕を抱きしめ、こちらに引っ張る。

いきなり至近距離で近づかれ驚く鬼太郎などお構いなしでユメコは好奇心のままに尋ねる。

「私、さっき鬼太郎さんがここに立ってるの見たの。一体、何をあんなに熱心に見てたの?」

怖いもの知らずというか・・・見かけはお淑やかそうなのに度胸のあるユメコの行動力に驚きと呆れと感嘆をこめて猫娘は息を零す。

「え?見てたって何を?」

「これよ、これ」

ユメコは鬼太郎の腕に自分の腕を絡ませたまま、彼をショーウィンドウまで連れて行き、ガラス越しに店員を指さす。

「え・・・・・・・」

鬼太郎の眼がそこへ行き・・・・。



ボッ。と火が付いたかのように真っ赤になった。



「なっ・・・な・・・ぁ・・・っ」

ずささっと後ずさる。

朱の盆並に染まった顔からは今にも湯気が吹き出しそうだ。

そんな鬼太郎をユメコと猫娘の視線が突き刺さる。

「な・・・・な・・・・・なんでもないよぉぉぉぉぉ~~~~~~っっっっ」

下駄の音を高らかに響かせて、脱兎のごとく駆け出して行った彼の背中を見つめ、二人は顔を見合わせた。

「・・・・・・図星だったみたいね・・・・」

「片思いだったのかしらね・・・・」

「逃げちゃったし・・・・・」

二人の少女は互いにふふふっと笑い合う。

「「なんか鬼太郎(さん)って、可愛い~~っvvv」」















はぁ、はぁ、はぁ・・・・・

な、なんでバレたんだ?

父さんが言ったんだろうか?

いや、そんなことはない。

アレは誰にも話してなかったぞ。

だとすると・・・・・女の子って・・・・。



あなどりがたし。

と、戦慄しながら鬼太郎はゼィゼィと荒い息を静めるために公園のベンチにドッカリと座り込む。

背もたれに上半身を預け、空を見上げる。

想い馳せるのはあの店にあった・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・これで望みも潰えたか~・・・・・」

あの・・・・あの・・・・・『厚底ブーツ』。

レジの上に飾られてあったアレを見た瞬間、アレを履けば望みが少しは叶うんじゃないかと期待した。



そうすれば、猫娘よりもユメコちゃんよりも背が高くなるのにぃ~~~。





─────男の子にとっては切実な想い。





〈完〉



--
そうそう! 背って男の子にとっては本当に切実なもんですよね!
なるほど厚底ブーツという手があったかっっ…! X'mas企画で戸田に教えてやれば良かったぜ!
下駄より厚底なら10㎝は軽く行くぞと…!!!!
猫娘と夢子ちゃんのやりとりも非常に微笑ましいこの作品…////
ヒノ様、素敵な小説本当に有難うございました!!
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