投稿作品、ラストとなります!
MH祭~夢草紙~ 第21幕
この短期間で再び作品を提供してくださいました!
ラストを飾るのはこのたびMH祭初投稿だった柳葉みよ様です!!
今回は4期鬼太郎。
不思議な描写で皆さんを魅了すること間違いなしvv
さあ、ラストを飾るみよ様の不思議な世界、どうぞ「つづきは~」からご堪能あれ!
※この作品はパラレル作品です。
鬼太郎と猫娘は本来の妖怪の姿ではありません。苦手な方はご注意。
酷く蒸し暑くて目が覚めた。外でアブラゼミが鳴いて、暑さを際立たせていた。
ゴロリ、寝返りを打ち、今まで背中を向けていた景色とこんにちわ。再び目を閉じて、夢の世界へ、
ブラックアウト
カンカンカンカン
すぐ近くで、踏み切りの音がする。
カァ
鳴き声が聞こえたのを合図に、白い視界が、
フェードアウト
じわりと額に汗が滲んだ。
夢か、陽射しが強い、日陰に避難。嗚呼、眠い。再び、暗転。世界が回転。
ばちり、視界の中にネコがいた。真っ白なネコの背後に黒い禍禍しい影が忍び寄る。
あぶない!
叫ぶのと同時に、視界が黒く暗転。
こんなところで終演か。背中を汗が流れた。
じっとしていても暑いなら、水浴びにでも行ったほうがましだろう。重い腰を上げたその瞬間舞台は切り替わって、
カンカンカンカン
踏み切りの音でハッとする。線路の上にネコがいた。
カァ
鳴き声が聞こえたのを合図に、突風が襲った。思わずネコに手を伸ばしたがその甲斐もなく、ネコの姿は掻き消されていた。突如襲った喪失感、なんという絶望感。
フェードアウト。
フェードイン。
自分の声で目が覚めた。うなされていたようで、寝汗をかいていた。嗚呼、全てが夢だったのだ、夢にしては、現実感のある暑さだった。今日は太陽は雲の向こうにいってしまって、涼しく過ごしやすい日のはずなのに。西の空には分厚い雲がいた。これは一雨きそうだ。
雨が降った。傘を持たずに人間界へ出掛けた子猫を迎えに僕は外へ。
妖気を辿ればすぐに見つかった彼女はいつもの元気さはどこへやら、憂いを漂わせ立ち竦んでいた。
「どうしたんだい?こんな雨の中傘もささずに」
彼女は俯いて、その小さい背中を震わせていた。
「ネコが、轢かれたの」
覗き込んだ腕の中にはあの白いネコが(この時点ではもう元の色が白だと断定できないかもしれないが、僕にはわかった)。
カァ
カラスが泣いた。
それを合図にしたように、雨風が強くなり、僕らの間を駆け抜けた。
フェードアウト
フェードイン
「どうしたの?」
僕の幼なじみが首を傾げていた。周りを見渡すともう終業時刻を過ぎていた。
「今日は、授業中ほとんど寝てたじゃない。昨日眠れなかったの?」
心配してくれている彼女が着ているのはセーラー服、僕が着ているのは学生服、そしてここは中学校。
「大丈夫、授業がつまらなかったから眠っちゃっただけさ」
「ダメよ、居眠りなんて」
「今度から気を付けるよ。……それより、今日は僕の家で期末テストに向けての勉強会だろう?さぁ帰ろう」
「うん!あ、待って、鞄を取ってくる」
なんてことはない。あれは夢だったのだ。僕が、妖怪、なんてのは。
「あ」
帰り道の途中、驚き声をあげた彼女の視線の先で白いネコが踏み切りの上に横たわっていた。
嗚呼、あのネコは。間違いない。何度も視たあのネコだ。
「お墓を作ってあげましょう?」
彼女が僕の制服を控え目に引っ張って、悲しみにその大きな翡翠の瞳を陰らせて、夢の中の子猫の妖怪と重なるその顔で僕に、言った。
「そう、だね」
…カラン…コロン…
頭の奥で下駄の音が鳴り響いた。
カンカンカンカン
踏み切りの音がした。
カァ
カラスがないた。
そして
突風が僕らを襲った。
―――ブラックアウト
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解説:白い猫が3つの世界で同時に線路上で事故にあって死んでしまうというアクシデントと、その白い猫が猫娘とセーラー服の女の子と同じ魂を持ち、カラスと鬼太郎と学生服の男の子もまた同じ魂を持っていて、かつ鬼太郎の妖力が強かったために鬼太郎の夢の中で引き起こされた不思議なこと
…だそうです! とても深い作品ですねっっ……劇風の描写が非常に素敵!
ラストを飾るにとても相応しい作品……みよ様、本当に有り難うございましたvv