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夢捨て場
日常報告及びネタ暴露専用のブログです
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2009/08/15 (Sat) 13:39

MH祭~夢草紙~ 第18幕

本日が募集最終日となりました……
そしてラストになってこの夏模様……くそ、天気が憎らしい。何でもっと早くこういう怪談シチュにならなかったのかっっ……!
悔やんでも仕方ない!

そんな事より! 何と今回ラストに駆けつけてくださった方がいらっしゃるのです!
しかも今回お話を提供してくださったのは、RDGのミクロ祭初出場、柳葉みよ
三期鬼太郎、鬼←猫ですが鬼猫でもいけるとのことです!

じわじわと迫り来る自分という“存在”の恐怖……その中に溢れる切なさ、哀しみ。
“夢”にふさわしいみよ様の作品、さあ「つづきは~」からご覧ください!

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まばたきをするとそこはお座敷で、私は部屋の奥にひとりでぽつんと座っていた。
一風変わった部屋だった。橙色の土壁に梁は赤、黄緑色の木枠に黄色の紙の障子、照明は寒々しいくらいの青色をしている。私は辺りを見渡した。どの障子も開いていて、隣の部屋や廊下が見えた。廊下の向こうには立派な庭と離れが見えた。とても大きなお屋敷のようだ。外は薄暗いのに、離れに通ずる赤い橋は鮮やかな色をしていたのが印象的だった。
人はたくさんいた。見知った顔はないけれど、どの人も色彩豊かな着物をその身に纏い、談笑しているようだ。しかし、何かがおかしいことに気付いた。

(、声が)

賑やかな様子だけが見えた。何も聴こえない。ゾクリ、と突如襲ってきた不安に、ジャンパースカートの裾をぎゅっと握り締め、俯いた。そこでまた私は言い知れぬ不安と、今度は恐怖まで加わって手が小刻みに震えた。

(どうして、)

私の真っ赤なジャンパースカートは、まるで漂白されたように、白色になっていた。
ジャンパースカートだけではない。肌も、髪も、私の何もかもが、白くなっていた。どうして、どうして、と私は顔を手で覆って、はっとした。

(つめたい、手)

私の手は、生きている温かさをひとつも感じさせなかった。死人のような血の通わない冷たい手をしていた。私の心臓は音を立てていなかった。

(い、や、よ)

私はたまらず立ち上がって、部屋を出て、廊下を走った。誰一人、私を気にする人はいなかった。どこに行けるかもわからないが、走って走って、それでも、私の脈はどくりともしなかった。

(嫌よ嫌よ!)

もうあなたあえないなんていや
わたしはずっとそばにいたいの

気付けば、知らない景色を見ていた。否、元々ここに知っている景色などないのかもしれないが。私は呆然としてへたりと座り込んだ。

(嗚呼これは夢だ)

だから、目を閉じたら覚めるはずなんだ。私はぎゅっと目を瞑った。けれど覚める気配はない。何度も何度も、私は目を瞑ったり開いたりを繰り返した。結果は一緒だった。何も、変わらないままだった。そのとき、赤い蝶がひらりと目の前を通り過ぎていった。

(あれは、あの赤色は、私の、あか)

私は当然のように、その蝶が私の赤い色全てを奪っていったのだと理解していた。夢中で手を伸ばして私はそれを捕まえようとするが、蝶はひらりひらりと手をすり抜けて、なかなか捕まえられない。躍起になって、私は追いかけた。しばらくして、周りにも数えることができないくらい沢山の蝶がいることに気付いた。それらの蝶は全て違った色をしていて、ひらりひらりと羽根がはためく度に煌めいて、幻想的な美しさを私に魅せた。そのあまりの美しさにぼうっと蝶の海に漂ってしまったが、視界の端に赤の蝶を捉えて私の意識は浮上した。その蝶を追っていると、蝶たちは同じ方へ向かっていることがわかった。私の赤い蝶もそこへ向かっていった。
蝶たちの先には大きな黒い蝶が構えていた。黒い蝶は、どうやら他の色鮮やかな蝶を吸収しているようだ。鮮やかな色彩を魅せた蝶たちが、闇に引き込まれていく様を、私は息を飲んで見ていた。
不意に、私は自分の足の爪先が黒い蝶に向かって吸い込まれていくのを感じて視線を落とした。そしてすぐに黒い蝶を凝視した。

(何、)

蝶が、私を喰らっていったように、私の爪先から白色がなくなって代わりに黒い蝶がだんだん灰色になっていった。もしかしたら、この黒い蝶は私を吸収して、そのからだを白くしようとしているのではないだろうか。
私は言い知れぬ恐怖を感じ、自分の肩を抱き込んだ。

(わるいゆめならば、はやくさめて!)

そして、目の前が白くなった。

 

暗いこぢんまりとした家に彼女はいた。私は実体があるのかないのか自分はどこにいるのかすらわからない夢現な気分で彼女を見た。彼女は以前ショートカットだったときにつけていた髪飾りを人差し指で愛おしげにすっと撫でた。
瞬間、場面が切り替わった。彼女は私と向き合っていた。

《ここで、猫娘として、生きていくと、決めたのです》

私と同じ、真っ白な人が凛とした真っ直ぐな声でそう告げた。しかし、真っ直ぐな瞳は私の向こうのだれかをしかと見据えていた。

《だから、あなたは、まだ》

今度は私に向かって、彼女は言った。目が合って私は彼女に何かおなじものを感じ、そして頷いた。

(きっとあれは私)
(でも私じゃないの)
(そうよ、だから私はまだ……)


まばたきをするとそこは見慣れたゲゲゲの森の中で、私は木の根元に座り込んでいた。

「猫娘」

あなたが私の名前を呼んでくれるから、どれだけ辛くても、
ここで、猫娘として、生きていくと、決めたのです。




--
自分が消えていく恐怖……自分が何かだんだんと解らなくなる恐怖……!
それでも愛する人を前に自分を取り戻す猫娘の健気さに涙しますっっ!!
色が無くなる、と言う辺りがすっごい夢らしいですよね!! 蝶に吸い取られていく様も斬新ですっっvv
みよ様、本当に素敵な作品を有り難うございました!

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柳葉みよ様へ。
大和 2009/08/15(Sat)16:48:35 編集
はじめまして、みよ様。
鮮やかに身をまとう色が失われていくというシチュにゾクリとしました。普段あるものが奪われるのは、たまらなく怖いものと思います。
3猫ちゃんの凛とした姿が好きなので、その姿が読めました事、嬉しく思いました。
有難うございました。
はじめまして。
tiara 2009/08/15(Sat)21:04:31 編集
こんばんは、柳葉みよ様。tiaraと申します。
夢だとわかっているとはいえ、自分が次々と奪われて行く恐ろしさ……。
早く醒めてと願いながらも、現実の世界でも切なさに身を焦がさなければならない3猫ちゃんの苦しみが伝わってきます(涙)。
素敵でそしてやっぱり切ない3期作品、ありがとうございました!
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