募集期間終了となりましたー!
本日が作品提示の最終日となります!
MH祭~夢草紙~ 第20幕!
なんとこの20幕のために、tiara様が三作品目を提供してくださいました!!
4期鬼太郎、しかもギャグ調ホラー!
RDG、MH祭投稿作品初のギャグ調です!
さてさて意外といたずら好きの鬼太郎が思いついたいたずらとは……?
閑話休題、ちょっとほっとするでも薄ら寒いホラーをどうぞ「つづきは~」からご覧あれvv
【 悪夢を召しませ 】
「これ、どうしましょうか」
七色の虹が消えて行った夜空から己の肩にちょこんと乗る目玉親父にきょろりと隻眼を転じて、なんとはなしに鬼太郎が尋ねた。
これ、というのは、先ほどの一戦のどさくさにまぎれて、手元に残った桃色の粉末。
夢の世界を自由に司る妖怪、まくら返しが振り撒いていた眠り砂だ。
「自分の望むとおり、好きな夢が見れるんでしたね」
「夢の世界に誘い込むのが目的じゃからのう、悪い夢では逃げられてしまう」
「逃げ出したら、現実に戻って来られるんでしょうか?」
「おそらくな。目が覚めてしまえば、それでおしまいじゃろうて」
父親の薀蓄に耳を傾けながら、鬼太郎は指先で顎をさする。
唇を尖らせた、息子特有の思案顔を、目玉親父が身を乗り出して覗き込んだ。
「おい、鬼太郎?」
「・・・・ちょっとした、悪戯を思いついてしまいました」
息子にしてはめずらしい、にんまりと張り付いた満面の笑みを向けられて、文字どおり眼球だけの顔を、目玉親父はぱちくりとまたたかせた。
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閑静こそがふさわしい、森の奥深く建つゲゲゲハウスも、今宵ばかりは騒々しい。
「もーっ鬼太郎!イタズラするもの大概にしてよねっ!」
「そうじゃぞ!年寄りを脅かしてどうするつもりじゃいっ!」
「まっこと、怖ろしかったでごわすー!」
「ぬーりー」
やんややんやと口々に己の恐怖を語り出す顔ぶれをぐるりと見渡して、鬼太郎は満足気にほくそ笑んだ。
「悪かったよ、みんな。驚かせてごめん」
「まあまあ、季節は夏の盛りじゃ。人間たちにあやかって、肝試し気分も良かろう」
にへら、と崩れた無邪気な笑顔と、のんびり茶碗風呂につかる父子の呑気さを見せ付けられては、これ以上怒るのも馬鹿らしくなって、仲間は一様にいからせていた肩をおろし、大きなため息をもらした。
鬼太郎が思いついた悪戯とは、まくら返しの眠り砂に自分の髪の毛を一本刻んで塗し、眠っているみんなにふりかける、というものだった。
類稀なる幽霊族の霊力を含んだ眠り砂は、まくら返しが使っていたものより数段上の威力を宿し、鬼太郎の思惑どおり、ささやかな悪夢を見せることに成功したのだ。
「若返りの薬を飲んだのに、今より皺だらけになってしまう夢なんぞ・・・・思い出しただけで怖ろしいっ」
「儂なんて、せっかく生えた髪の毛が抜けてしもうて・・・・」
はじめから若くもふさふさでもないくせに、互いを慰め合う砂かけ婆と子啼き爺。
負けじと、一反木綿がひらりと前に進み出る。
「おいなんて、つやつやの絹の布になった身体が、あっという間にほどけて糸になってしもうたでごわすよっ」
「ぬーりー」
相変わらずぬりかべの言葉は理解不能だが、とにかく悪い夢を見たことだけは確からしい。
ごめんごめん、ともう一度謝罪を口にして、鬼太郎は隣に座る幼馴染みに隻眼を向けた。
「君は?どんな夢を見たんだい?」
「・・・・教えないっ」
本気で怒っているわけではないだろうが、臍を曲げた猫娘はなかなか厄介だ。
ここはどんな手を使ってでも機嫌を直してやろうと、一歩膝をにじり寄らせようとした時、粗末な小屋を壊しかけない勢いで、つむじ風よろしくひとつの人影が飛び込んで来た。
それが誰だか確認するまでもない。
途端、辺り一面に鼻の曲がるような異臭が蔓延した。
「やいやい鬼太公ッ!俺っちにひでェ悪夢を見させるたァ、いい根性じゃねえかッ!」
ボロ雑巾のほうがまだマシだと思える薄汚れたマントを身に纏い、やって来るや否や、そうまくしたてるねずみ男を、一同はもちろん、鬼太郎もぽかんと見上げる。
黙っているのをしらばっくれるつもりと解釈したのか、今日という今日は勘弁ならねェ、と唾を撒き散らしながら、ねずみ男は呼吸も忘れて怒声を張った。
「黒ェマント羽織った骸骨男が大振りの鎌持って、生命もらって地獄へ連れて行くって言うんだよッ!てめェ親友の俺っちをションベンちびるほど脅かしてどうしようッてんだ?ああン!?」
ねずみ男の夢に現われたのは、どうやら地獄の使者────死神らしい。
死神なら本当に知り合いだから、そんなまどろっこしい手を使わなくたっていつでも地獄送りにしてやれるよ、と持ち前のクールボイスで言い捨ててやろうかと隻眼を細めた鬼太郎は、しかしあることにハタと気づいて、自称・親友をしげしげと見つめ返した。
「・・・・それ、僕じゃないよ」
「なんだよォ!凄んだって、怖かねェぞう────って・・・・なんだって?」
怒りのやり場に困ったねずみ男が、ぴたりと動きを止める。
息を呑む周囲の注目を一身に浴びながら、鬼太郎は飄々とつづけた。
「だから、それは僕じゃない。おまえのなんて夢の中まで臭そうで、入る気にもならないよ」
「そ、そんなァ・・・・」
真っ赤だったねずみ男の顔面が、今は真っ青に変わっている。
鬼太郎は面白くもなさそうにその顔を見返し、目玉親父に至っては完全無視でお風呂タイムを満喫しており、猫娘をはじめとする一同も、冷めた視線を震えるねずみ男に据えるばかりで、誰ひとりとして労ってやる者はいない。
「じ、じゃあ、あの夢は・・・・・・・・一体・・・・・・・・」
一拍の静寂のあと、キェェェェェェェ、という鶏が頸を絞められるような金切り声が、ゲゲゲの森中に響き渡った。
END.
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……どんまいネズミ!!笑
さて、あのまくら返しのお話のその後、のようですが……猫娘の夢は一体どんなものだったのでしょう……vv
とても気になりますね!!
おばばと児泣きの夢もなんて可愛いのかっっvv ぬりかべや一反木綿も災難でしたね;;
最後の最後に素敵な作品を有り難うございました! それにしても親父……息子を止めようよ。笑