ラスト一週間突入ーーーーーーー!!!!
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……てな感じでMH祭~夢草紙~ 第10幕!
ラストスパートで駆けつけてくれた方がいっぱいいるのですがまだちゃんと作品を読んでなくて(すみませんっっ!!;;)
とりあえず間を持たせるために自分が一つ……
ラプソディアWリーダー……と言うよりは、4主(シオン)という感じで。
「つづきは~」からご覧くださいませ
夢喰い::
バクは悪夢を食べる動物だと、シグルドは微笑みながら教えてくれた。
戦利品だと差し出す彼の手には、ガラス製のバクがあった。全体的に丸く、顔の先だけ長く伸びている。黒と白の斑模様。目は黒でぐりぐりと塗り潰され、何処を見ているのか、とにかくお世辞にも可愛いとは言い難いその人形は、シオンの手に置かれた。
不気味な空虚を写すかのような瞳は、見開かれたままシオンに向けられている。
シオンは少々眉を顰めつつも、シグルドに小さく「ありがとう」と告げた。
シグルドは小さく首を振りながら、シオンに言う。
「枕元に置いて寝ると、悪い夢を食べてくれるそうですよ」
シオンはそんな彼に思わず尋ねた。
「何で、……俺に?」
シグルドの隣で、様子を見ていたハーヴェイが口を挟んだ。
「シオン様、ちゃんと鏡見たか? パンダみたいだぜ」
続けてシグルドが言う。
「ポーラたちも心配しています。なれない陸旅で疲れてらっしゃるのだろうと思いますが……」
原因は他にもあるのではないか、と相談されたそうだ。彼女に。
何でそれをこの目の前の海賊たちに告げたのかはわからない。
いや、群島戦争でこの二人をよく連れ回したし、その過程でポーラも二人とは随分打ち解けた。広い海原を駆け回る彼らなら、何かジンクスのようなものを知ってると思ったのだろう。
彼らとて医者を気取っているわけではない。
所謂気休めと言う奴だ。それはわかるが……
「―――心配、かけてごめんね」
シオンがぽつりと呟けば、二人は笑ってシオンの背中を叩くのだった。
***
罰の時間は経過したはずだった。
今シオンにあるのは赦しの時間。ならば何故こんな夢を見るのか。それはどうも、この左手と言うよりは自分自身に問題があるように思える。
思えるがしかし、どうすることもできない。
どうしようとも思わない。
左手から、じわじわと漏れ出す暗雲。
今日もまた、あの空間を歩く所から夢の旅は始まる。
歩けども歩けども光は全く見えてこない。
だんだん重くなる体は、左から漏れ出す黒い煙に包まれているようだ。
それが徐々に背中に集まる。
背中に集まって、塊になる。
塊になって、ものすごい重量となり、シオンを押しつぶそうとする。
それはまるですがりつくかのようで。
吹き出す汗を拭おうにも、腕すら何かにしがみつかれて動かない。
ずる、ずる、と引きずるようにして歩き続ける。
先は、見えない。
耳元で小さく声が聞こえる。
シオンの耳に唇を寄せて、何かが小さく呟く。
「置いてかないで」
シオンは頷いた。「大丈夫、置いていかない」。声は途絶えた。
再びシオンの耳元で声がした。
「代わって」
シオンは首を横に振った。「ごめん、大切な人がいるから」。声は途絶えた。
またシオンの耳元で何かが囁いた。
「殺して」
シオンは苦笑を漏らした。「もう、死んでる」。声は途絶えた。
そんな無意味とも思えるような問答を続けながら、シオンはただひたすら歩く。永遠かと思われるような、歪んだ世界を歩き続ける。
そして気が付いたら朝になっている。気が付いたら目を開いている。それが常だった。
が、しかし。
「?」
不意に、背中が軽くなった。
そして背中から、小さな悲鳴が聞こえた。
シオンはは、と後ろを振り向く。何かが後ろにいる。あまりの重さに体ごと後ろを向けないから、何とか首を回す。だが、そうしている間に体はどんどん軽くなる。
黒い煙が、吸い込まれるように後方に消えゆく。手を伸ばして、シオンにすがりつくそれ。シオンも思わずそれに手を伸ばした。しかし、煙はこの手をすり抜けるだけで。
その先を見て、シオンは愕然とした。
バクだ。
あいつだ。
あいつが長い鼻をひくつかせながら、もぐもぐと煙を食べていた。
暗雲の断末魔が聞こえる。微かで、儚いけれどでも、確かに聞こえる。「助けて」と。
「何をっ……!」
止めろ、とそれに向かってかけだした。
バクはごくり、と喉を鳴らしてそれを飲み込む。そして舌なめずりをすると、きゅう、と目を細めてシオンを見た。
「とても、美味しい、ですねェ。あなたの、夢」
バクの言葉に、シオンは思わず立ち止まる。
バクは愉しげに笑って、繰り返した。
「とても、美味しい、ですねェ。あなたの、夢」
そしてあの大きな目をまん丸に開くと、おぞましい声で囁いた。
「あなたは、どんな、味?」
漆黒の闇に似た瞳孔が、シオンを見つめる。
その鼻がひくり、と動いてシオンに近づいた。
そのとき。
――――がっしゃん。
シオンは跳ね起きた。びくり、と地面の上で跳ねる体。体中から迸る汗。荒い呼吸。
何事だ、と上体を起こせば、そこには地面とシオンを相互に見つめ、おろおろと取り乱したキリルがいた。
「し、シオっ……ごめん! 僕、足下に全然気付かなくてっ……弁償する! 弁償するからっ!」
だから許して! と彼は手を合わせて頭を下げた。
見れば、キリルの足下に転がるガラスの破片。
昨夜シグルドがくれた、あのガラス製のバクが、粉々に砕け散っていた。
「キリル……」
「ホントごめん! もう朝食だから起こしに来たんだけどまさか枕元にこんなの置いてるなんて思わなくてそのっ……!」
「キリル」
あわあわとすがりついて来るキリルの腕を、シオンは取った。
思わずその肩口に頭を預け、シオンは深くため息をつく。
「……ありがとう」
「え?」
何、何が?
僕何かした?
キリルが困惑気味に尋ねる。しかしシオンはそれにすぐには答えられず、ただただまだ荒い動悸をおさえようとため息をつくのだった。
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オレバクのあの顔怖くて苦手なんだわ。