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夢捨て場
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2008/08/03 (Sun) 10:15

ミクロホラー祭第4弾(談)!!!

またしても素敵作品をご提供いただきました!
今回はサラサ様よりなんとSBM!
アスカ主人公のもんのすごい作品ですっっっ!!

アスカ好きにはたまりませんよ! つづきからどうぞ!!

↓↓↓

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本当に怖いのは…::


全てを壊しつくすかのような激しい戦闘も、闇が辺りを覆い尽くすころには影をひそめた。
逃げまどい、あるいは互いを殲滅するために動き回っていた人影も今はない。月明かりの下、動くものは小動物か、明かりの悪戯で揺らいで見える影のみ。
全てが息絶えた錯覚を起こさせるような荒涼とした中、小さな影が動く。
 
「お、ラッキー、これ食えそうじゃん。こっちは…こりゃ駄目だ。」
 
それはポンチョを着込んだ小さな少年だった。闇を恐れる様子もなく、薄い月明かりの下で、『今晩の収穫』を確認していた。彼は闇にまぎれて他人の家に忍び込み、食料や服、貴重品をちょろまかしては、それを売りさばいているのだ。時間の勝負になるので、手当たり次第に袋に突っ込み、離れたところまで逃げてきて、このように中身を確認するのだ。
  
 
盗品を分類し、再度袋に詰めなおすと、アスカは立ち上がった。その眼の端に何かの光を捕らえた。その光を確認するために顔をめぐらす。月の光を受け、小さくその存在を主張するものに、アスカは
猫のように足音を潜ませ、そっと近づいた。
光の正体は、鎧の肩口についた装飾品であった。鎧の主は、アスカよりはるかに体格がよく、成人に達していると思われる天使であった。元は美しかったと思われる鎧も、原形を推測するしかないほどいびつに歪んでいた。一見模様に見えるそれは血痕か。
彼は瓦礫に背を預けた状態で、首をうなだれたまま微動だにしない。
 
『生きてんのか?それとも…?』
 
アスカはどんな小さな音も逃さないように耳を澄ませ、どんな変化も見逃すまいと目を凝らす。呼吸音は聞こえない。影だと思っていた背後の黒いものは、瓦礫にべっとりと付いた血糊だった。純白の羽も千切れ、赤黒く染まっている。出血量から考えて、既にこと切れているのは明白だった。
  
 
それを確認すると、ほっとしたように小さく息をつく。そして慎重に歩を進めた。
 
「暗くてよく見えないけど・・・結構ものがいいんじゃん?傷も少なそうだし・・・。」
 
亡骸の横に立ち、更に目的のものを検分する。そして、己の見立てが正しいことを確認すると、アスカは我知らず笑みを浮かべた。 
素早くポケットからナイフを取り出すと、その装飾品を外しにかかる。
死者を冒涜する行為。罪悪感はない。もちろん、死体に触れることへの薄気味悪さはある。しかし、戦いに倒れた同族への痛みや悲しみといったものはなかった。単に知らない相手だからではない。アスカにとって、敵も同族も関係ない。危険の度合いは違えど、彼にとって安心できない存在であるという意味ではどちらも同じなのである。
まして死体など珍しくない。それにいちいち驚いていたり、まして心を痛めていたりしては生きていけない。命を失い、単なる抜け殻となったそれは、そのまま土に帰るだけである。天使も悪魔も変わりなく。ならば、自分の今後の生活に、少し役立てたところで罰は当たるまい。アスカはそう考えていた。
彼にとって重大なことは、目の前にぶら下がった、思わぬ掘り出し物を見逃さないことだった。
 
 
しかし、そう簡単にお宝が剥がれるわけもなく、小さく舌打ちをしながら、アスカは根気よく戦利品の獲得作業に没頭した。何度もナイフを突き立て、鎧との間に出来た僅かな隙間にナイフの先端を差し込み、少しずつそれを動かし剥がしていく。
「あと・・・す、こし・・・と・・・よっしゃ!」
ポロリと彼の掌に零れ落ちた宝石は、わずかな月明かりに冷たくも凛とした輝きを放つ。アスカは月明かりにかざし、その美しさにしばし見とれた。
ぐらり・・・と影が動き、アスカの体に大きな何かが覆いかぶさってきた。
 
「ひ!!う、うっぷ、むん」
 
口から飛び出しそうになる悲鳴を、必死で自分の掌に抑え込み、恐る恐る自分の状況を確認する。
それまでアスカにされるがままだった天使の亡骸が、宝石が取れた途端、バランスを崩し倒れてきたのだ。その感触と冷たさに、アスカは一瞬息が詰まる。
  
 
「ち、く、しょ・・・邪魔だって・・ば!」
 
何とか死体の下から抜け出ようともがく。体温のないその体は、恐ろしいほどに重く、まるで掴みかかるようにアスカから離れない。
渾身の力を振り絞り、ほうほうの体で抜け出すが、抜け出すアスカの体に引きずられるように、死体の手が彼の体に絡みつく。それは己の所有物を返せと訴えているようだった。力がないはずの手が足首を掴む。
 
「い、い、か、げん、放せよ!」
 
いらだち、アスカは持てる力を足に込め、その手を振り切る。やっとの思いで抜け出したときは、すっかり息が上がっていた。肩で息をしても、心臓がまるで耳元で響くようにガンガンと音を立てる。体の震えが止まらなかった。
 
恐る恐る振り返ると、背後の天使と目が合い、体がギクリと強張る。先ほどまでアスカを拘束していた体は、今は地面に力なく伏していた。彼の無念と名残を示す手は、まっすぐにアスカに延ばされたまま、光を失ったはずの瞳は、同じ天使である彼に向けられている。死の直前に張り付いたままの苦悶の表情は、今、同族であるアスカへの恨みの表情に変っていた。
相変わらず心臓の音はうるさかったが、自分に向けられる視線に、アスカは無言でにらみ返す。
 
 
キリリと歯を噛みしめた後、アスカが口を開いた。
 
「・・・いいじゃん、あんたその年まで生きたんだ。自分の信念で生きて死んだんだろ。その後の残りモンでおいらが生きて何が悪い!同族も何も関係ねえ、おいらだって生きたいんだ!!そのために必死になって何が悪い!!死んだてめえに何ができる!好きで戦って死ねたんだ、本望だろう!」
 
言い終わるやいなや、思い切りその亡骸を蹴りつける。その勢いに押されて、アスカから視線が外れる。辺りが静寂に包まれた。
大きく肩で息をするアスカの耳に、いらだった大人の声が届いた。
 
「おい、あっちの方で声がしたぞ!うちを荒らした奴じゃねえのか!?」
 
「やっべ!逃げなきゃ!!」
 
くるりと身を翻し、ポンチョの裾をはためかせながら、持ち前の身軽さで闇にまぎれていく。
 
  
走りながら、先ほどの天使の表情が脳裏に繰り返し浮かぶ。それはやがて自分の顔に変わり、アスカは自分の背に走る震えに体を強張らせる。上手く呼吸が出来ず、足がもつれそうになる。倒れそうになる足に力を込め、浮かぶ映像を振り切るかのように強く頭を振る。
 
『・・・明日生き残れる保証はどこにもない・・・』
 
生まれたからには死ぬまで生きたい。天使としての誇りもなく、悪魔と戦う力もなく、逃れ、怯えながらの生活だとしても、それでも生きたい。そのためならば何でもする。
闘う力のない己の生の幕を下ろすのは、恐らく他者だ。それは敵である悪魔だけとは限らない。
 
 
『死んだ奴に何ができる・・・!!』
 
 
アスカは、自分の背後で聞こえる怒号と、常に己の背後に潜む恐怖から、少しでも離れるかのように足を速めた。




--
ss by サラサ様
アスカ主人公ss!!
これを読んでいてアスカの恐怖とか哀しみとかっっ…涙でそうになってしまいました!
果たしてアスカの本当の恐怖は一体何だったのか…?
おそらくお一人お一人にアスカの恐怖が垣間見えたはず…
本当にクオリティの高い作品を有難うございました!!
また是非参加してやってください、サラサ様!!
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