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夢捨て場
日常報告及びネタ暴露専用のブログです
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2008/08/12 (Tue) 17:49

ミクロホラー祭第七弾!
皆様ご存知、真っ先にこの突発企画に反応してくださった大和様が、再び素敵作品を投稿してくださいました!!
何とですね、また矢野が我が儘を言った所…

鬼太郎五期、蒼猫ssを提供してくださったのですよっっっっ!!!!!!!(絶叫

蒼猫好きは必見!
さあ刮目して見よ!(by 初代ドラキュラさん) 大和様の作品、「流星」です!

↓↓↓

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 星::
 
  
 星の光だけが頼りとなる夜の道。
 猫娘の瞳孔はこの暗い道でも光を必要とせず、すっかり遅くなったバイトの帰りを急いで家路に向かっていた。
 八月も中旬にかかり、暑さは最高潮に達している。
 この頃までは、人間界は暑いのだ。うだるような熱気は、時に業火の様に思える事もある。猫娘はハンカチで首筋の汗を拭きながら、歩いていた。
 面を上げた猫娘の視線の先に、仄かな灯りを見付けた。
 提灯を持って歩いて来たのは、蒼坊主だった。
 
 「蒼さん」
 
 猫娘は身軽にこの封印師の許へ走って行った。
 
 「よぉ、猫ちゃん。今、バイトの帰りなのかい?」
 
 明るい笑顔が猫娘を迎えた。
 
 「うん。――蒼さんは、何処へ行くの?」
 猫娘は、言った。「また、封印の見回りの旅に?」
 その表情に、多少の淋しさが込められているのを、蒼坊主は見た。
 
 「まぁな」
 
 それでも、あえて気付かぬふりの様な声で、蒼坊主は答えた。
 天の星が――流れた。
 見上げていた猫娘の大きな目に、流れた星の光が、落ちる。潤みを帯びた双眸が、蒼坊主を見た。
 
 「封印の見回りって、楽しい?」
 
 蒼坊主は、その真意を汲み取ろうと、彼女の瞳をじっと見た。
 
 「――見回りの旅なんざ、楽しいものじゃねぇぜ?」
 
 楽しいと思ってやっている事ではない。
 彼の――これは使命なのだ。己の与えられた能力を最大限に生かして、全てのものの安寧と秩序を守る為の、それは、誇り、でもあった。
 
 「そう、かぁ」
 
 猫娘は、それ以上言わなかった。
 俯き、乾いた笑みを浮かべている。
 何かあったのかな、と、蒼坊主は思った。
 猫娘の様子に、不安定さと可笑しみを感じる。
 こういう姿の時は大抵――鬼太郎がらみなのだが、と、蒼坊主は察知するのだが、はた、と思う。最近は特に二人の間でぎくしゃくする関係はなかった筈だ。
 蒼坊主は、不精髭の生えた顎の辺りをポリポリ掻きながら――猫娘とは逆に――天を見た。
 また、星が流れた。
 
 「今日は流れ星が多いな」
 
 沈黙を嫌う様に、蒼坊主が声を出した。静寂(しじま)に意外に響く自分の声に、蒼坊主自身が驚く。
 
 「そうね」
 
 俯いていた猫娘が、やっと蒼坊主を見た。その目の端が、ふわふわと光る何かを捉えた。
 ホタルである。
 
 「ホタルだよ、蒼さん」
 
 猫娘が驚いている。
 
 「ホタル? ――本当だ」
 
 猫娘の視線の先を見て、蒼坊主が半ば呆れた様な口調で答えた。
 ホタルが飛び交う時期は、とうに過ぎている。
 只一匹だけ、ふわふわと迷い出てきたそのホタルは、規則正しい発光の明滅周期を保ちながら、二人の間を飛び回っている。
 
 「――狂いボタル、だな」
 
 ぼそっと、蒼坊主が言った。
 
 「狂いボタル?」
 「時期ずれで現れるホタルの事を言うんだよ」
 「へぇ。蒼さん、博識だね」
 
 感心しきっている猫娘に対し、少々バツが悪そうに、蒼坊主は苦笑した。
 
 「否、ま、俺が勝手に命名したんだがな」
 「あ、そう」
 
 若干、拍子ぬけした様な猫娘の表情。蒼坊主は、声を上げて笑った。
 猫娘も、つられて、笑った。
 ホタルが、ふらふらと猫娘の方へ飛んできた。
 笑っていた猫娘は、目を細め、そっと指を伸ばした。ホタルの光は、不思議な事に猫娘の指に吸い寄せられる様に、近付いてきた。
 ホタルが止まる直前――その細い指を大きくて武骨な指が包み、下ろしてしまった。
 蒼坊主が、猫娘の伸ばした腕を捉えて下ろした。その腋に、提灯のつり棒をはさみ、もう片手で、猫娘に止まろうとしたホタルを、捕まえた。
 
 「蒼さん?」
 
 暖かく大きな手に包まれた猫娘は、耳まで赤くなりながら蒼坊主を見上げる。だが、蒼坊主は――決してロマンティックな演出をしたのではなかった。
 その表情は――封印師のものだった。
 
 「猫ちゃん」
 
 封印師が、言った。「不用心に狂いボタルに手を伸ばしたら駄目だ。こいつに、連れていかれちまう」
 
 「連れて、いかれる?」
 
 蒼坊主の説明を聞きながらも、猫娘の胸は激しく高鳴っていた。それを悟られない様に落ち着いた声を出そうとするが、不自然な程、上ずってしまう。
 
 「ホタルが光るのは、雌雄の確認の為だ。狂いボタルは文字通り、狂っている。狂いながら、己の伴侶を求めて舞う。ホタルの成虫の寿命なんてのは自然界じゃせいぜい三、四日だ。自分の目的を実現しようとするんなら――連れていくしかねぇと思うらしい」
 
蒼坊主は、猫娘を見た。ぞっとする程の、冷静な顔で。
 
 
 「あの世へな」
 
 
 猫娘の細い指が、びくっと震えた。蒼坊主は、まるであやすかの様に猫娘のその包んだ指を軽くゆすった。
 
 「ま。そーいうこった」
 
 何時もの、くだけた口調が戻ってくる。
 蒼坊主はホタルを捕まえた方の手に、少しだけ力を入れた。指の間から――小さな悲鳴と、光の欠片が流れて、消えた。
 
 「蒼さん……」
 「これも一種の封印だよ。俺の仕事だ」
 
 仕事の内容とは裏腹に、蒼坊主はカラッと笑った。
 陽気な表情と仕事している表情。その二つの表情の違いに、とても魅力を感じる。――猫娘の胸の奥に息づく、あまり表に現れない特別な感情が、急にこみあげてきた。
 
 「お。悪ぃ、悪ぃ」
 
 猫娘の手を離さなかった蒼坊主は、やっとそれに気付き、ぱっと手を離した。が、その手は再び猫娘の手に捕まった。
 甘える様な、従順なその手に、蒼坊主の方が狼狽した。
 
 「有難う、蒼さん」
 
 掛けられた言葉より、何より、猫娘のその手のぬくもりの方が、彼女の想いの全てを物語っていた。
 蒼坊主は、笑った。
  
 
 天の星が、また流れた。
  


 
<fin>


--
ss by 風と花びら~妖怪奇譚~/大和様
取り敢えず猫を嫁に貰ってください蒼兄さんっっ!!!!!!!(またしても絶叫
猫のいじらしい言動は勿論のこと、封印師蒼坊主の凛々しさに心臓貫かれた人はきっと多いことでしょう!
しまった…またクーラーのはずが一人でヒートアップしてしまった…
ホラーとしてのクオリティもさることながら、この身悶えするようなシチュエーションのすばらしさ!
大和様、本当に有難うございました!
まだまだ作品募集中です! よろしかったらまた是非是非vvvv
 
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素敵です~v
森咲まゆみ 2008/08/12(Tue)21:26:44 編集
蒼猫SSでホラー、すごく素敵でした!
仰る通り、蒼さんの凛々しさにきゅんきゅん来たのですが、狂い蛍の醸し出す情念にぞくっと来ました。
それにしても連日蒼猫が読めて、こんなに幸せでいいんだろうか・・・。
すっかり他力本願の毎日でございます(爆)

矢野さん、鬼猫コミックの続きも楽しみにしておりますv
でしょうっっ!!///
shino 2008/08/13 09:03
まるで自分が描いたように自慢しています!!(著作権問題っっ!!!
本当に最近蒼猫三昧で美味しい嬉しい満腹満腹♪ですね!
あ、勿論まゆみ様の新作もすっごく楽しみにしていますっっ!!!
(日記の黒猫なんて最高でしたっっvv)
漫画も頑張ります~~~~~~;;
どうかまた是非遊びに来てやってくださいvv
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